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〜烈戦記〜
第十四話 〜第二次蕃族掃討戦・前〜
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っくっく…』

さぁ、戦はもう間近じゃ。
いや、戦ではない。
あくまで下ごしらえの時間じゃ。
あとは願わくば餓鬼がそのまま敵に殺されず、おめおめ逃げ帰って来て尚且つ豪統共が主戦場から離脱でもしてくれれば最高の形になる。

そうすれば一旦ワシらは 奴らの敵前逃亡 を理由に悠々と退却でき、尚且つ重要拠点を敵に手放しておめおめ逃げ帰ってきた情けない豪統の餓鬼の汚名と、それの尻拭いをし、拠点を取り返した我が息子の名声を同時に比べて世に知らしめる事ができる。
比べる相手がいればそれだけ先の失態の汚名も簡単に返上できようぞ。

『がっはっはっはっは…ん?』

おっと、考え事をしているうちにいつの間にか兵達との距離が開いていたようじゃ。
はたから見ればワシ一人が軍から突出しているように見える。

…しかし、そんなに早く馬を歩かせていたかの?
そもそも、仮にそうであっても将に行軍を合わせるのが兵というものじゃろうに。
まったく、戦前だというのに情けない。

『貴様ら!行軍が遅れておるぞ!何をしておるか!』
『は、はいぃ!』

まったく…。

ぞろぞろと兵士共が再びワシの真後ろに列を整える。
心なしか前列の兵士共は顔が引きつっているようにも見えるが、まぁ気のせいじゃろう。

『ん?』

そして丁度よく前方からは味方の斥候達の走ってくる姿が見えた。
その後ろを良く見れば敵陣の柵らしきものが見てとれる。
どうやらそろそろのようじゃ。

『ふむ…』

だが、本来ならここで軍の歩みを止め戦前の鼓舞の一つはする所なのじゃろうが本戦で無いと知っている分気が乗らない。
ようは面倒なのじゃ。
だから今回は無しとしよう。
そうしよう。
仮に今更不自然だと奴らに思われた所で何もできまい。

『…くくっ』

いかん。
またにやけてしまう。

ワシはこのにやけを誤魔化すように雲一つない空を見上げた。
空はそれはもう長閑に晴れ渡っていた。
やはり、天は今ワシの味方じゃ。

そうワシは確信し、再び前方から走ってくる斥候達とその後ろの敵陣を見据えた。
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