第十四話 〜第二次蕃族掃討戦・前〜
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はまだやめられない。
落とし所まではいかなきゃならない。
緊張の中、言葉を続ける。
『お前は目上の人間が下の人間を同等に見るのが美徳だと思ってるようだが、はっきり言わせてもらう』
『俺達は俺達以上の人間だと上を信じて命を預けてんだよ!お前みたいにへこへこした輩になんて安心して命預けれねぇんだよ!』
『…っ!』
『餓鬼が戦場に出てくんじゃねぇ!』
よし言ってやった。
言ってやったぞ。
俺は興奮していた。
予想以上にしっかりと言い切れた事に自分でも驚き、そして歓喜した。
胸がバクバクしているのが伝わってくる。
それが俺には心地よく、程よい高揚感と達成感を感じさせた。
だが、それの意味を察してスッと頭が冷静になる。
…あぁ、やはり俺は小心者だ、と。
自分が相手にした事が無いような大多数の人間に注目されているからといって、高々餓鬼一人に正論吐いたくらいでこれなのだ。
これじゃあ50人規模の隊長程度で精一杯だ。
農民上がりの兵士じゃここが限界だな。
多分言い切った後の俺は相当得意気な顔をしていたのだろうよ。
はっ!気色悪いぜっ!
そうやって自分を何とか白けさせていた。
『…グズッ』
『…え?』
だが、俺はそれに集中する余り目の前の変化には気付いていなかった。
『ぼっ、僕だってっ…グズッ』
おぃおぃマジかよ。
え、まさか、嘘だろ、こいつ、泣くのか?
『僕だってっ、こっ、グズッ、こんな事になるなんてっ…グズッ…思ってなかったんだっ!うわぁぁぁ!』
そう言い切るとこいつは大勢が見守る中で大声で泣き出した。
えー…。
でも…そうだよなー。
こんな平和ボケした奴が好き好んで補助役も付けずに一人でのこのここんな所来るはずないよなー。
けど、だからって泣く事ないだろに。
お前仮にも男だろ。
それに見てみろよ周りを。
これじゃあ俺がこの餓鬼を泣かせたみてぇじゃねぇかちくしょう。
…まぁ実際そうなんだけどさ。
あの兵士なんて、うわぁーあいつ子供泣かせたー大人気ねー、みたいな目で見てきやがる。
だけどなぁ違うだろ?
悪いのは別に俺じゃなくないか?
実際こんな指揮官にお前らだって命預けたくないだろ?
どうせ戦闘が起きたら真っ先に逃げんだろ?
俺は逃げるぜ?
お前ら善人ぶってんじゃねぇよこんちくしょう。
俺は嫌な視線を受け、背中を冷汗で濡らしながら、今も尚泣き続けるこの餓鬼に目をやる。
…確かにこの餓鬼にはちと言い過ぎだったかもしれん。
それにこの空気は俺がどうかしないといけなようだ。
このまま放置ってわけにもいかんだろうし…。
あー。
本当貧乏くじ引いちまったよちくしょー。
『…な、なぁ』
『うわぁぁぁ!』
『…』
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