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〜烈戦記〜
第十四話 〜第二次蕃族掃討戦・前〜
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というのは体験談、または軍学書などから得た知識を頭に詰め込んでいれば勝てるというものではない。
何故なら現場というのは天、地、人という三つの不確定要素が絡み合う場所であり、同じ刻は存在しない。
それに対し戦の知識というのは限定的な状況への解決法に過ぎない。
つまり戦の知識だけでは限界があるのだ。
だが戦の経験というのは変化し続ける現場の中であらゆるものを必要最低限な情報を元に解決、または試行錯誤してきた事案の積み重ねの事だ。
そしてそこには数々の可能性や条件状態、そしてその分だけの解決法がある。
だから書や言葉とは単純に判断材料である情報量が圧倒的に違うのだ。
そしてその知識と経験の差というのは今までの戦の中で何度となく痛感させられた事だ。

幸い大局的に見れば兵力や継戦能力ではこちらが圧倒的優位ではあるが、それでも最前線で戦う兵士達にとってみれば関係無い。
彼らにとってみれば一つの戦での結果は生きるか死ぬかなのだ。
勿論現場の指揮官である我々も例外ではない。
そういう意味でも一戦一戦での力関係の不利というのは不安だ。
だからこそこの一戦に油断や妥協は許されない。
それに、純粋な練度の差も気になる。
だからこそ今、他事を考える暇があるならばその間に再度作戦や地理情報の確認、また練度の低い隊との連携や不足の事態などを頭の中に入れておく必要がある。

私は自身の身体に戻ってきた緊張感の中で再び豪統様から言い渡された特別任務について考えを巡らせた。





『み、皆さんどうぞよろしくお願いします!!』

…なんだあれ。

それがあの餓鬼に対しての第一印象だった。
今俺の目の前では成人をいったかいってないかわからないような豪帯という餓鬼が俺達兵士を集めて健気にも頭を下げてよろしくお願いしますと叫んでいた。
そして今度はこれまた律儀に最前列にいる兵士から順に一人一人握手を交わして激励の言葉をかけていく。

なんて素晴らしい鼓舞なんだ。
こんな鼓舞は今までに見た事も聞いた事もない。
そしてなんとあの方こそが正に俺らの今回の司令官様だそうだ。


…頭が痛くなってきた。

『…隊長』

同じように俺の後ろこの光景を目の当たりにしていた部下の一人が後ろから心配そうに声をかけてくる。
いや気持ちはわからんではないが、俺にどうしろと?

部隊の兵士というのはいつだって下っ端の立場にあり、その処遇や所属は状況により変化する。
そして当然その所属、即ち上司が無能であればあるほど俺達の死は近づく事になる。
そりゃ前線の兵士にとって死というものはいつだって身近にあるし、それも承知で兵士をやっているのだ。
だから死ぬのが怖いなんて言うつもりはない。
だが、俺達だって人間だ。
できる事なら犬死
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