暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
聖者の右腕篇
02.観測者
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、人間であるオイスタッハに攻撃を加えることを躊躇する。それをオイスタッハは見逃さない。

「いいでしょう、獅子王機関の秘呪、確かに見せてもらいました──やりなさい、アスタルテ!」

 強化鎧の筋力を前回にして、殲教師が背後へと跳躍。代わりに雪菜の前に飛び出してきたのは、ケープコートを羽織った藍色の髪の少女。

命令受託(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、“薔薇の指先(ロドダクテュロス)”」

 少女のコートを突き破って現れたのは、巨大な腕。それは虹色の輝きを放ちながら雪菜を襲う。

「ぐっ!」

「ああ……っ!」

 かろうじて雪菜が激突に勝つ。“薔薇の指先”と呼ばれる眷獣を、銀の槍が引き裂く。眷獣のダメージを受けたアスタルテと呼ばれる少女が弱々しく苦悶に息を吐く。

「あああああああああ──っ!」

 少女の絶叫と同時に背中を引き裂くもう一本の腕が現れる。
 眷獣が二体、というわけではない。もとより左右一対ひとつの眷獣なのだろう。しかしそれは、独立した別の生き物のように頭上に襲う。

「しまっ──」

 雪霞狼の穂先は、眷獣の右腕に突き刺さったままだった。もし一瞬でも雪菜が力を抜けば、手負いの右腕に雪菜は潰される。
 そしてこの状況では、雪菜は、左腕を避けられない。

 死を覚悟する。
 ただ最後に一瞬だけ、見知った少年の姿が脳裏によぎる。ほんの数日出会ったばかりの気怠そうな顔をした少年の面影が。
 自分が死ねば、きっと彼は悲しむだろう。
 だから死にたくない、と雪菜は思った。そう思った自分自身に雪菜はひどく驚いた。

「姫柊ィ──!」

 思いがけないほど近い距離から、その少年の声が聞こえてきた。

 第四真祖、暁古城の声が。




「おおおおおおォ!」

 古城は単純に握りしめた拳で、巨大な腕の形の眷獣を殴りつける。
 虹色に輝く眷獣の左腕が、勢いよく吹き飛んだ。そして眷獣の宿主である少女も、その衝撃に転倒し、雪菜と戦ってた右腕が消滅。

「なっ……」

 雪菜は呆然とでたらめな光景を眺める。

「なにをやってるんですか、先輩!? こんなところで──!?」

 どうにか気を取り直して、雪菜は訊く。古城は怒りを隠そうともせずに、

「それはこっちの台詞だ、姫柊! このバカ!」

「バ、バカ!?」

「様子を見に行くだけじゃなかったのかよ。なんでお前が戦ってんだ!」

「そ、それは──」

 うー、雪菜が物言いたげに口ごもる。古城は詳しくは理解せずともいろいろとあったことはわかる。

 古城は空を飛べないし、空間転移魔法などももちろん使えない。二基の人工島を連結する長さ十六キロの連絡橋を、全力疾走は流石に疲
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