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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
聖者の右腕篇
02.観測者
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重心を落とす。

「行動不能の魔族に対する虐殺行為は、攻魔特別措置法違反です」

「魔族におもねる背教者たちが定めた法に、この私が従う道理があるとでも?」

 男は巨大な斧を振り上げる。

「くっ、雪霞狼──!」

 槍を構えて、雪菜が疾走った。負傷する吸血鬼めがけて振り下ろされる斧をギリギリ受け止める。

「ほう……!」

 戦斧を弾き飛ばされた男は、巨体からは想像できない敏捷さで後方に飛び退き、雪菜に向き直る。

「なんと、その槍、七式突撃降魔械槍(シュネーヴァルツァー)ですか!? ”神格振動波駆動術式(D O E)”を刻印した、獅子王機関の秘密兵器! よもやこのような場で目にする機会があろうとは!」

 男の口元に、歓喜の笑みを浮かべ、眼帯のような片眼鏡が、紅く発行を繰り返す。

「いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば相手にとって不足なし。娘よ、ロタリンギア殲教師、ルードルフ・オイスタッハが手合わせを願います。この魔族の命、見事救ってみなさい!」

「ロタリンギアの殲教師!? なぜ西欧教会の祓魔師が、吸血鬼狩りを──!?」

「我に答える義務なし!」

 巨体が、大地を蹴り加速。振り下ろされる戦斧が、雪菜を襲う。それを見切って紙一重ですり抜ける。
 反撃。旋回した雪菜の槍が、オイスタッハの右腕へと伸びる。
 回避不可能と悟り、鎧で覆われた左腕で受け止める。
 青白い閃光が撒き散らされる。

「ぬうぅん!」

 左腕の装甲が砕け散り、その隙に雪菜が距離を稼ぐ。

「我が聖別装甲の防護結界を一撃で打ち破りますか! さすがは七式突撃降魔械槍(シュネーヴァルツァー)──実に興味深い術式です。素晴らしい!」

 破壊された左腕でを眺めながら、オイスタッハが満足そうに舌なめずりをする。
 彼はここで倒さなければならない、と剣巫の直感が告げる。

「──獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威を持ちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

「む……これは……」

 雪菜の体内に練り上げられる呪力を、槍から放つ。
 直後、雪菜はオイスタッハへと攻撃を仕掛ける。

「ぬお……!」

 閃光のように放たれた銀の槍を、殲教師の戦斧が受け止める。だが、その威力に数メートル近く後退。
 しかし雪菜の攻撃は終わらない。至近距離からの嵐のような連撃。

 単純な速さではない。人間である雪菜は、霊視によって一瞬先の未来を視ることで、誰よりも早く動くことができる。

「ふむ、なんというパワー……それにこの速度! これが獅子王機関の剣巫ですか!」

 雪霞狼の攻撃を受け止めきれずに、半月斧がひび割れ、砕け散る。
 その瞬間
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