第十章 イーヴァルディの勇者
第九話 雪解け
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らと光が舞っている。
大きな……巨大な……月が砕け、小さな小さな砂粒となって空を舞っている。
『イーヴァルディは竜に向けて剣をふるいましたが、硬い鱗に阻まれ、弾かれました。竜の爪や、大きな顎や、吹き出す炎で何度もイーヴァルディを苦しめました。』
様々な光を受け、砂は輝き、舞っている。
空に輝く月の光を、星の光を―――そして、地上で輝く、太陽のような暖かな光を受けて……。
『イーヴァルディは何度も倒れましたが、そのたびに立ち上がりました。』
タバサは見つめる。
眩い輝きを放つ彼の背中を。
暖かな輝きを放つ彼を―――士郎を。
『竜が止めとばかりに、炎を噴き出したとき、驚くべきことが起こりました。イーヴァルディが握った剣が光り輝き、竜の炎を弾き返したのです。イーヴァルディは飛び上がり、竜の喉に剣を突き立てました。』
見つめる中、士郎が振り返る。
輝きの中、士郎とタバサの視線が交わり―――
――――――ぇ……?
タバサの目が見開かれる。
―――わらっ、てる?
士郎が笑っていた。
とても、柔らかい、笑顔だった。
『どう! と音を立てて竜は地面に倒れました。』
眩げに、タバサの目が細まる。
太陽を見上げた時のように。
『イーヴァルディは、倒れた竜の奥の部屋へと向かいました。』
輝く左手が動き、士郎は自分の顔を指差してみせた。
『そこには、ルーが膝を抱えて震えていました。』
疑問符を浮かべたタバサだったが、誘われるように手が自分の顔に向かって動く。
「―――ぁ」
『「もう大丈夫だよ」』
そして、気付いた。
――――――笑っ―――て、る―――
タバサは笑っていた。
頬に触れた指先が、暖かな雫で濡れる。
笑っていた―――泣きながら。
ぼろぼろ、ボロボロと涙をこぼし、泣いていた……泣きながら……笑っていた。
一年、二年……何年もの關痰ェ降り続け、何時しか氷ついた世界に、今、光が満ちる。
暖かな光が、硬く、固く、凍えた世界をゆっくりと溶かし―――
『イーヴァルディはルーに手を差し伸べました。』
「――――――皆の所へ、帰ろう」
伸ばされた手を、迷いなくタバサは握り締める。
長く……永く続いた、雪と氷に覆われた世界に―――
『「竜はやっつけた。きみは自由だ」』
――――――雪解けの時が、来た。
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