第十章 イーヴァルディの勇者
第九話 雪解け
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。お前は今、笑えるか?」
問いかけた。
「…………わら、える?」
問いを問いで返すタバサに、士郎は頷きを返す。
「ああ。お前が望むように、俺たちがここから去り、母親と一人ここで幽閉されることになれば、お前は笑えるか?」
「…………」
問いに、無言で応える。
否、答えられない。
「なあタバサ。お前は以前、俺に『正義の味方の定義』について聞いてきたな。なら、今それを教えてやる。俺の答えは、な―――」
何処か照れくさそうに、はにかむようにして士郎は笑み。
「―――笑顔だ」
答えた。
「……え、がお」
『正義の味方の定義』とは?
その質問に対する士郎の答えは、『笑顔』だった。
その答えに対し、タバサがまず始めに思ったものは、「シロウらしい」というものであった。
だが、直ぐに疑問が浮かぶ。
今度の疑問は、「どうして笑顔なのか?」という疑問だった。
だから、タバサは質問した。
「どうして、えがお、なの?」
まるで子供だ。とそんな思いがタバサの心を過ぎる。
疑問に浮かんだことを直ぐに口にする。小さな子供のようだ、と。自分で考え、予想し、答えを出すことなく、直ぐに相手に答えを求める。それは多分、早く知りたいのだろう。彼の、エミヤシロウのことを。
顔を上げ、夜の空を見上げる士郎。無数に輝く星空を見上げ、士郎は言葉を紡ぐ。
「何が救いになるか何てのは、他人が勝手に決められるようなものじゃない。人それぞれ、時と場合によって『救い』の形は変わる。ただ、それを知る手掛かりはある」
「それが、『笑顔』?」
タバサの斜め後ろに立つルイズが声を上げる。士郎は顔を戻し、ルイズに頷く。
「ああ。みんな笑っていた……だから、タバサ。お前が本当にここに残ることを望むというのなら、笑ってみろ。それが自分の『救い』だと笑って見せろ。本当に笑えるのなら、俺はここから立ち去る」
「っ、ちょ、シロウッ!」
そんなことを言ったら―――ッ!!
タバサの後ろ、キュルケが焦った調子で士郎に声を上げる。勢いがつき、身体が前のめりになるのを止められない。そのまま勢いのあまり足を一歩前に出すキュルケ。
っ、やばっ。前にはタバサが―――っ。
タバサを後ろから抱きしめるような位置に立っていたキュルケは、前に一歩進むだけでタバサに当たってしまう。しかし、
―――え?
キュルケの身体が、タバサにぶつかることはなかった。
だが、直ぐにタバサが何処に行ったか気付いたキュルケが顔を上げると、確かにそこにタバサがいた。
士郎と距離を詰めるように前に向かって歩いていたタバサが立ち止まる
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