Development
第二十五話 共鳴
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その様子は明らかに照れているのだが、それを指摘しようとした紫苑にここ最近培われた危機回避能力が働き、言葉を飲みこんだ。彼には何故か、その言葉を言い切ればミシミシと骨が軋むほどのヘッドロックをかけられる未来が見えた。
「……私はからかわれるのは嫌いだぞ?」
「わ、わかってるよ」
千冬の言葉に、自身が命拾いしたこと改めて実感する紫苑だった。
(西園寺さんにはわかっていたのですね。彼女と戦う前の心構えでいたら、きっと初撃で不利な状態になっていましたわ。そして、織斑さんの動き。彼女は、わたくしだけでなく彼にまで成長を促してきた。まるで全てを見透かしたように……なんて方ですの)
セシリアの心中はもはや数時間前とは別人といっていいほどの変化を遂げていた。
それは、彼女にとって一つの壁を乗り越えたということでもある。
そして、認める。目の前の存在は、いずれ自身を超える可能性のある者だと。
しかし、代表候補生である自分がここで負ける訳にはいかない。それは以前までのチャチなプライドなどではなく、自身を見つめ直した結果生じた誇りであり矜持。同時に、一夏を認めたが故の意地だった。
セシリアは瞬時にビットを展開して再び攻勢に出る。
一夏もそれらを躱しながら隙を窺う、先ほどまでとほとんど同じ光景。
一夏は、先ほど自分が迎撃されたのはビットの位置を把握しきれていなかったからだと判断し、すべてのビットの状況把握に努める。そして、それらがセシリアの位置から離れた一瞬を見逃さずにブーストを仕掛ける。既にビットは動作しており、しかしそれらは全て躱しきれる必殺のタイミング……のはずだった。
『チェックメイトですわ』
その瞬間、あり得ないことがおこる。ビットによる攻撃の最中、セシリアのスターライトの照準が一夏に向けられ……放たれた。
『がはっ……!』
それは一夏に直撃し、二発目三発目が続けざまに襲い掛かる。その間もビットによる射撃は止まっておらず、全弾ではないもののある程度正確に一夏を捉えている。
それらの射撃はそのまま彼のシールドエネルギーを削りきり、勝敗は決した。
『そこまで! 勝者、オルコット!』
「まさか、並列制御までたどり着くなんて……」
紫苑にとって、試合の結果に関しては予想通りだった。しかしその過程は彼をして驚嘆するものだった。
「あぁ……だが、違和感があるな。本当に並列制御が可能であればわざわざあの場面まで引っ張る理由がない」
それは千冬も同じだったようだが、彼女は紫苑よりは多少冷静に見ていたようである。そして、紫苑もその言葉に先ほどまでの場面を脳裏で再生し、一つの可能性に思い至る。
「……自分の癖、弱点を逆手にとった?
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