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IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
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第二十五話 共鳴
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果たして、それはどれだけの時間だったのだろう。二人はその先は何も言わずにただ視線を交わす。だがこの間もモニター内の戦況はさほど変わっていない以上は大した時間ではなかったのだろう。
 やがて、糸が切れたように場の空気が弛緩する。

「もっとも、今の僕じゃ瞬殺されちゃうだろうけどね。生身の千冬さんにすら勝てる気がしないよ」
「お前は私をなんだと思っているんだ……。だが、そうだな。お前や束が暴走するようなら私が全力で止めてやるさ」

 先ほどの緊迫した状況が嘘のように、二人は笑い合う。
 お互いが、もともとは束という共通の友人を通じて縁故を結んだ二人ではあるが、そこで得た絆は容易く切れるものではない。二人は既に共犯者なのだから……。



(事前に見てなかったらすぐにやられてた……でも、何とかやれる!)

 一室で紫苑と千冬が、モニターから意識を逸らして会話に興じている間も当然ながら戦いは続く。
 その中でも一夏は驚異的な成長を遂げていた。始めはただ、事前に知ったセシリアの癖を頼りに不格好に避けるだけだったが、徐々に鋭さを増し続ける。やがて、それは紫苑の姿と重なるように紙一重の領域にまで近づいてきた。

(織斑……一夏。あなたもですか)

 一方のセシリアもまた、目の前でまさに成長する男の姿を見て冷静になる。それは、今までの彼女の概念を覆すものだった。この一日で、彼女の常識やプライドは尽く打ちのめされてきた。そして、その状況に至ってようやく彼女は理解できた、この瞬間ようやく彼女は自身を見つめ直し、弱さを認めたのだ。それはつまり、本当の意味での彼女の成長を意味する。

『はぁっ!』

 先ほどまで躱すことのみに集中していた一夏も、無駄な動きを排したことで幾ばくかの余裕ができた。故に、ここで初めて攻勢に転ずる。

『甘いですわよ!』

 しかしセシリアに、もはや当初の油断などは微塵もない。
 ミサイルタイプのビットを予め手元に寄せておき、彼の突進ルート上に撃ち放つ。

『っく!』

 彼にとっては予想外だったのか、放たれたミサイルを避けることが出来ないと判断したのか、手に持つ雪片で斬り落とそうと試みる。しかし、素人がそうそう正確に対処できるはずもなくそのままミサイルは爆風を巻き起こす。
 直撃は避けられたものの、その勢いに一夏の突進は阻まれ逆に再び距離を離されることになる。
 しかし、その粉塵により無駄撃ちを嫌ったセシリアも一度攻撃の手を休めることになる。無論、紫苑との一戦で敗れるタイミングとなったこの場での油断はあり得ない。

『あぶねぇ……でも、次はいける!』

 煙が晴れた場所から少し離れたところ、若干構えを緩めた一夏の姿が現れた。その表情からは、ここまでの攻防で得た自信が窺える。


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