Development
第二十五話 共鳴
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して、守るべきものも違う二人は決して同じ立場ではない。故に、お互いの認識には齟齬が生じている。
一夏が手にした刀、それは千冬がかつて愛用してきた、彼女の専用機の武装である。
自身や一夏がなぜISを動かせるか知った紫苑からすれば、別段不思議なことではなく、その後に起こり得ることも予測ができた。しかし、千冬はその理由までは知らない。
「もしかして、もう使えるんじゃない?」
「! やはり……」
紫苑は、一夏が雪片を手にして現れたときに半ば確信に近いものを感じていた。
彼が、既に単一仕様能力を、それも千冬と同じものを使えるのではないかと。
「お前の想像通りだ、見たところ嘗ての私と同じ『零落白夜』が使えるようだ。既に使用方法と注意点は伝えてある」
零落白夜とは、エネルギー性質のもの全てを無効化、消滅させるかつて千冬のみが使用できた攻撃能力である。それを用いた雪片による一撃は、シールドエネルギーを無効化して直接相手にダメージを与える。結果的に、絶対防御が発動するのだが、これにより通常より遥かに相手のシールドエネルギーを削ることが出来る。
一方で、自身のシールドエネルギーも大きく消耗する諸刃の剣だ。
「そういえば、お前も先ほどの試合で被弾していないのに僅かにエネルギーが減っていたな。あれもワンオフアビリティなのか?」
「ううん、違うよ。確かに天叢雲剣の形状変化はシールドエネルギーを消費するけど、あの武装自体の能力みたい。僕はまだワンオフアビリティは使えないよ」
「そうか……」
そもそも、ワンオフアビリティは第二形態から使用可能とされており、発動例自体が少ないものの今まで例外はなく理論的にも正しいとされている。
では、なぜ彼は使えるのか……それを知るのは束のみ。いや、紫苑も既にその正確な理由にほぼ到達していた。
「千冬さんも薄々気づいているんじゃない? アレのコアは、完全に初期化されていないよ。かつて千冬さんがたどり着いた第三形態の頃の記憶を、ワンオフアビリティを引き継いでいる……、だからこそ織斑君は白式を動かせる」
「……」
紫苑の言うように、千冬はその可能性を考えていた。
しかし、それは同時に一つの事実を晒すことになる。
「僕は、コアに残っているもとの持ち主だった紫音の遺伝子情報を借りて動かしている。特異な例ではあるけど、一応は一卵性だからほとんど同じみたいだしね」
千冬の表情は、紫苑の言葉が進むにつれて苦いものになっていく。
「なら……織斑君は誰の遺伝子情報を借りて動かしているんだろうね?」
「……紫苑」
「ごめん、千冬さん。これ以上は聞かないよ。でも、そのことが僕の……束さんの障害になるならその時は……」
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