第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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シャルの口から、ハッキリと警戒の色が混じった声が漏れる。何の興味もないと感情が浮かんでいなかった瞳に、今はしっかりとした敵意と、微かな恐れが混じっていた。
「あれでも抜けんか。確かにこれは苦労するな」
「いやいや相棒あれでも十分だと思うぜ」
士郎の舌打ち混じりの声に、デルフリンガーの賞賛の声が向けられる。
「だけどやっぱり相棒の剣でも届かねぇか。こりゃ嬢ちゃんの力を借り―――」
「―――いや、一つ試してみたい方法が出来た」
デルフリンガーの応援を求める声を、士郎は月明かりに照らされるビダーシャルの姿を見て否定した。
「試してみたいって?」
疑問の声を上げるデルフリンガーを無視して、剣を握っていた左手を離し、右手で掴んだデルフリンガーを大きく振りかぶる。
「ちょ、おいおい相棒! あんたなにするつも―――」
「すまんなデルフ」
デルフリンガーの声を聞き終える前に、士郎はデルフリンガーを肩に乗った砂埃を払うビダーシャルに向かって投げつけた。
「またかよおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉォォォォっ!!?」
ドップラー効果を残しながら飛んでいったデルフリンガーは、
「無駄なことを」
傲然と立つビダーシャルの前の地面に突き立ち。
「っな―――」
地面を抉り、大量の土砂を中空に巻き散らかした。
自分に投げつけられたと思っていた剣の予想外の行き先に戸惑いの声を上げたビダーシャルだったが、自分に向かって落ちてくる大量の土砂を前に相手の狙いを見抜く。
「この程度の土砂で我が『反射』を壊せると思うなッ」
小規模な土砂崩れのように落ちてくる土砂を前に立ちふさがるビダーシャル。その姿が土砂の前に埋まったかと思った瞬間、「ドンッ!!」という爆発音と共に土砂が四散した。
細かく散った土砂が霧のように辺りを満たし、視界はほぼゼロに近い。ビダーシャルは顔の前に手をやり、目と口を砂から隠しながら周囲を見渡す。あの男ならば、剣を拾って再度襲ってこないとも限らないと、ビダーシャルが周囲を警戒しながら、足を前に動かした時、
「ん?」
胸に何かが当たった。
それは硬く、熱いもので、自分の拳よりも少し大きいぐらいのものだとビダーシャルの思考が過ぎった瞬間―――
「―――捕らえた」
ビダーシャルの全身に、今まで感じたことがない感覚が走り抜けた。全身の肌という肌が泡立ち、背筋に電撃に似た寒気が走り抜け、一瞬にして口の中が乾いた。
耳に触れた言葉を理解できず、思考もその刹那空白に満ちた。
だから、それは思考の外、本能的なものだったのだろう。
左手に嵌めた指輪が作動し、身体が後ろに飛び―――しかし、間に合わなかった。
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