第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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てん」
「そうかな」
デルフリンガーを横に一振りし、身体に支障がないことを確認した士郎は、デルフリンガーを両手で構える。
そして、小さく己が持つ剣へと問いかける。
「デルフ。今のは何だ?」
「ありゃあな、『反射』てぇ魔法だ。エルフが良く使う魔法でな。あらゆる攻撃、魔法を跳ね返す汚ねぇ先住魔法だよ」
「破る方法は」
「あるとしたら嬢ちゃんの魔法か、あとは……まあ、反射できねぇ程の攻撃を食らわせればいいんだが……いくら相棒でもそれはちょっと望み薄だな。あのエルフ、とんでもねぇ『行使手』だ。この城中の『精霊の力』と契約してやがる」
戦慄混じりのデルフリンガーの声に、士郎は柄を握り直すと揶揄う口調で声を掛ける。
「びびったか?」
「へんっ、剣がびびるかよっ!」
デルフリンガーの物言いに、士郎の口元に笑みが浮かぶ。
と、そんな士郎たちの前、突然ビダーシャルは両手を振り上げた。
「石に潜む精霊の力よ。我は古き盟約に基づき命令する。礫となりて我に仇なす敵を討て」
詠唱が終わると同時に、ビダーシャルの両脇の地面が、地響きと共に『ボゴリ』と鈍い音をたて盛り上がり、地面に埋まっていただろう大量の石が空中に浮く。
振り上げた腕を下ろしたビダーシャルは、右手で士郎を指差す。
「相棒ッ!」
デルフリンガーの声が上がり、無数の石が士郎に向かって散弾のように襲いかかる。速度的には弓矢と変わりはない。だが、その数が文字通り桁が違った。小さいのは親指程度、大きいのは拳大の石が数千近く一気に士郎に襲いかかる。
回避は不可能。
迎撃もまた不可能。
だがそれは、
「オオオォッ!」
相手が士郎でなかったのならば、だ。
咆哮とともに剣を振る。
その速さは既に人の目で追える速度ではなかった。見えなくなっていた剣が姿を現した時には、砕かれた石が生み出した砂煙が、もううもうと辺りを満たしていた。
「なっ!?」
初めてビダーシャルの顔にハッキリとした驚愕の色が浮かんだ。驚きの声を漏らした口が閉じきる前、立ち込める砂煙を引き裂くように一つの赤い影がビダーシャルに飛び込んできた。
「ッッオアアッ!!」
「くッ、ッぅ?!」
横殴りの、ホームラン狙いのバッターのように大振りに振り抜かれるデルフリンガー。振り抜かれた後、遅れてその剣先の方向、慌てたように顔を向けたビダーシャルの視界に、脇腹から三センチの場所でブルブルと震える剣先が映る。
「ちぃっ」
苛立ち混じりの鋭い舌打ちと共に、剣先がビダーシャルの視界から消える。と、剣先を追うように衝撃が発生するが、その時には剣の持ち主は遥か遠くに避難していた。
「……貴様」
ビダー
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