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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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置いて立ち去るというのならば、わたしはお前たちに危害を加えないことを約束しよう」

 ビダーシャルの声は穏やかなものであったが、キュルケを囲むように立つルイズたちにとっては竜の咆哮のように感じられた。竦む身体を歯を食いしばりなんとか耐えると、返答代わりにと睨み付ける。ビダーシャルの目がすっと細まり、刃のような視線がルイズたちに向けられ、それを遮るように士郎がその前に身体を割り込ませた。

「嫌だと言ったら?」
「残念だが、わたしはその娘とその母親を『ここで守る』と約束してしまった。連れていかれるわけにはいかない」
「ならどうする?」
「―――っ」  

 士郎の顔に笑みが浮かぶ。獰猛な、力のある笑だ。
 その笑みに、一瞬ビダーシャルは息を飲む。
 
「ダメっ! そのエルフには勝てないっ! 逃げてっ!」

 背後からタバサの悲鳴混じりの声が響く。だが、士郎は振り向かず、逃げることもしない。そんな士郎の背中に、

「シロウッ」

 ロングビルの声と共に投げつけられたものがあった。

「すまん」
「おいおいおいおい相棒いきなりかよ。台車の下に縛り付けられるのからやっと開放されたかと思えば、いきなりぶん投げられるわ。『久々の戦闘で嬉しいなっ!』と思ってたら相手エルフかよっ!? 無理無理無理っ無理無駄無謀だ相棒ッ!?」
「気合が入ってるなデルフ」
「どこをどう聞いたらそんな結論になるのっ!?」

 シロウはギャーギャー騒ぐ剣を地面に突き刺すことで黙らせる。
 沈黙したデルフリンガーから視線を上げると、士郎は何の警戒をすることなく自然な様子で立つビダーシャルに顔を向ける。

「俺も争いは好まないが、止めるというのなら抵抗をさせてもらうぞ」
「好きにしろ」

 士郎の言葉に、ビダーシャルは短く返す。
 刹那、

「ッッ!」
「―――ムッ?!」

 士郎の姿はビダーシャルの前にあり。士郎が大上段から振り下ろした剣は、ビダーシャルの手前で固まり小さく震えていた。訝しげな顔で止まった剣とビダーシャルを交互に見返す士郎。ビダーシャルもまた、驚いたように目を見開いていた。

「相棒ッ!」

 鋭く上がったデルフリンガーからの警告の声に、士郎の足は反射的に地面を蹴る。同時に、士郎とビダーシャルの間の空間が歪み、士郎に向かって衝撃が走った。だが、その時には士郎の身体は既に中空にあり、衝撃は士郎の足元を通り過ぎていく。地面を蹴った勢いと、足元を過ぎる衝撃により、風に舞う木の葉のように空中をくるくると回った後、士郎は足から地面に綺麗に着地した。
 ビダーシャルは、怪我一つなく地面に立った士郎を細めた目で一瞥する。

「ほう。怪我一つない、か。ただの蛮人の戦士ではないようだな。だが、それでもお前は我には勝
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