第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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にルイズは走る。
でも……まずはシロウと合流しないとね。
「ふぅ……」
最後の料理が運ばれていくのを確認すると、士郎は頭を覆っていたナプキンを取り外し小さく溜め息を吐いた。
アーハンブラ城の調理室が借りることができなかったため、士郎はロングビルやギーシュの手により井戸の近くに造られた簡易的な台所で料理を作っていた。井戸があった場所は宴の会場である中庭から少し距離はあったが、特に問題はなかった。中庭から聞こえてくる兵士たちの声が、始めの頃と比べ明らかに小さくなっていることに気付いた士郎は、作戦が順調に進んでいると判断し、口元に笑みを浮かべた。間もなく宴が始まってから一時間が経過する。そうすれば、酒や料理に入れられた眠り薬の効果により、この城の殆んど全てが眠りにつく。その時が行動開始の時だと、士郎は小さく頷く。
しかし、まだもう少し時間があるし、少し片付けでもしておくかと、士郎が臨時の台所を見回す。
「ん、持っていき忘れたか」
その時、士郎の視界に一つの料理が目に入る。
それはこの宴で振舞った料理の中で最も多く作った料理―――ピザであった。特別な工夫や珍しい材料等は使用してはいないが、今朝取れたばかりの新鮮な野菜を使ったもので、今日の料理の中でも特に好評だったものだ。勿論その材料の中には眠り薬がたっぷりと入っていた。そして今、士郎の前にあるものは、そんなピザの内の一つであり、一番オーソドックスなものであるマルガリータであった。ただ一工夫として味付けしたはしばみ草を乗っていた。はしばみ草は、生で食べればその強烈な苦味に拒絶反応を見せる者は多いが、ある味付けをすれば程よい苦味の調味料となる。これをピザやパスタに振りかければ、独特の苦味が丁度よく抑えられ不思議と後を引く味になるのだ。
士郎は忘れられたピザを見下ろしながら、どうするかと首をひねる。
眠り薬が入っているため食べるわけにもいかず、かといって今から持っていくのも……。
ふむ、と顎を撫でながら士郎は、はしばみ草が振りかけられたピザを見下ろす目を細めた。
そう言えば、タバサはこれが大好物だったな……。
はしばみ草が好物であるタバサは、この士郎特性のはしばみ草のピザが大好物で、士郎がタバサから何かを教えてもらった時などの報酬代わりに良く作ったものであった。
無表情ながらも、このピザを食べた瞬間、微かに頬が緩む姿を見るのが、士郎は密かな楽しみにしていた。
最後に食べさせたのは確か、一ヶ月程前だっただろうか……少し調理方法を変えて苦味を強くしてみたら、タバサは何時も以上に頬を緩ませて食べていた
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