第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
[12/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
よ」
「それがな―――ぁ」
ギーシュの言葉に疑問を投げつけようとしたロングビルの顔に、理解の色が浮かんだ。
答えを得て咄嗟に出た小さな声を耳で拾ったギーシュは、口元に笑みを作り頷いた。
「そう。あのエルフの魔法は、別に周囲から使い手を隔離してるわけではないんだ。だから、使い手を攻撃と思われるものからは自動的に守るけど、攻撃と判断できないものは別に防ぐわけじゃない。なら攻略方法は簡単だ」
「攻撃と判断できない攻撃をする」
「当たり」
ギーシュの言葉を続けるように、ロングビルが口にした答えに、ギーシュは頷く。
「それが、『アンケイ』?」
「そう」
「その『アンケイ』って一体なんなの?」
キュルケがタバサを抱きしめながら問いかける。
「超短距離から爆発的な威力を出す打撃技だよ」
「「「「は?」」」」
後ろから聞こえる疑問の声に、ギーシュはこみ上げる笑いを堪える。
自分も同じだったと。
打撃技―――打撃と聞いて、その正確な意味が分かるものは、多分殆んどいないだろう。それはメイジだけでなく、このハルケギニアに住む殆どのものがそうだ。大体、素手の戦闘方法があるなど、見たことも聞いたこともない。当たり前だ。メイジには魔法があり、それは杖さえあれば、炎で敵を焼き、風で敵を切り刻むことができるのだから。メイジに少しでも対抗しようとする平民には、剣を、弓を、そして銃があり、それを鍛えれば、時にはメイジにも勝てる力を得ることができる。
なのに、わざわざ素手で戦おうとする者がいるわけがなく、そんな戦い方を考える者もいるわけがない。
あったとしても、そんなものに意味はないと思っていた。
―――あの時までは。
士郎から水精霊騎士隊に入隊が許され、最初の訓練の時、ギーシュたちは士郎と模擬戦を行った。
それは別段おかしなものではない。
だが、その内容はものすごくおかしなものであった。
ギーシュたちが魔法でも何でもありな状態に対し、士郎は素手だけだったのである。
いくら士郎が強くても、素手で、しかも複数のメイジと同時に戦って勝てる筈がないと思いながら行われた模擬戦。
結果は惨憺たるものであった。
ギーシュたちの完敗というか惨敗であった。
模擬戦が終わったそこには、傷一つ、汗一つかくことなく立つ士郎の前に、文字通り血反吐を吐くギーシュたちの姿があった。
昔のことを思い出し、顔色を若干悪くしたギーシュは、軽く息を吐き気分を入れ替える。
「君たちにわかりやすく言えば、拳を相手に当てた状態で、体の中にエア・ハンマーをブチ込むみたいな技だよ」
「「「うっ」」」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ