第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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「―――――――――――――――」
地震が起きたと感じる程の揺れが走ると同時に、水入りの風船を地面に勢いよく叩きつけたような奇妙な湿った音が響き渡った。
本当の痛みを受けた時、人は声を上げることが出来ないと、ビダーシャルはその時初めて知った。
生きたまま内臓を抉りだされ、それを地面に叩きつけられたのではと、痛みのあまり間延びした思考の隅でそんなことを考えながら、ビダーシャルは自分に痛みを与えた相手を見る。
視線の先、繰り出した技の衝撃により、砂の霧が晴れた向こうに、腰を落とし右拳を突き出したまま姿の男―――士郎がいた。
「……浅い、か」
落としていた腰を上げた士郎が、離れた位置に転がるビダーシャルを見下ろす。
視線の先のビダーシャルは、腹に手を当て、幼虫のように身体を曲げながら、口をぱくぱくと開けたり閉じたりしていた。声を上げるどころか、息も上手く出来ないのだろう。ビダーシャルの大きく開いた口から「ヒューヒュー」とすきま風のような音が聞こえてくる。
半死半生の姿を見せるビダーシャルを前に、しかし士郎は油断することなく拳を構える。
腹を抑え地面に横たわるビダーシャルと、それを見下ろす士郎の姿を、安全な離れた位置に立つルイズたちが驚愕に目を見開いた顔で見つめていた。
ルイズは見開いた目で横に立つロングビルを見上げる。
「ね、ねえ? 今何が起きたの?」
「さ、さあ? 地面が揺れたと思ったらあのエルフがぶっ飛んだとしか」
何が起きたか理解できずに混乱するルイズたちに、解答を告げたのはルイズたちを守るように前に立つギーシュの口からだった。
「多分だけど、あれは『アンケイ』だと思うよ」
「え?」
「何よギーシュ。シロウが何したかわかるの?」
キュルケの問いに、ギーシュは前を向いたまま頷いた。
「シロ―――隊長の攻撃を防いだエルフの魔法だけど。あれは多分相手の攻撃に対して自動的に反応する魔法だね。それも使い手の意思がなくても、攻撃を自動的に感知して防御する魔法」
「何でわかるよ?」
「隊長の二回目の攻撃の時、あのエルフは完全に虚を突かれてた。もしあの魔法が使い手の認識がなければ発動しないものだったら、あれで勝負がついていたはずだからね。でも、そうじゃなかった」
「それがわかっても、どうしようもないんじゃないの?」
「まあ、確かに普通はそうだね。エルフの魔法の鉄壁さを確認しただけなんだから。……でも、隊長はそんな魔法の穴を見つけた」
「穴?」
皆の視線がギーシュに向けられる。ギーシュは皆の視線を背に感じながら大きく頷く。
「そう。突破口という名の穴を、ね。ぼくもさっき気付いたんだけど。あのエルフ、砂煙を受けて肩に砂が乗ってたんだ
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