第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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残っている。しかし、二人はそんなことは知らないとばかりに、笑顔を振り撒きながら、男たちを誘うように踊り続ける。
何故、二人は踊り続けられるのか……それは、信じているからであった。
自分たちが動けなくなったとしても、彼なら絶対にやってくれるという信頼があったからだ。
例え相手がエルフであろうとも、彼ならタバサを救い出してくれると。
だから、キュルケとロングビルは自分たちに任された仕事を全うしようとする。踊りで男たちを惹きつけ、興奮させ、その欲望を煽り、肉を、酒を飲ませた。
そして、その努力は花開くことになる。
疲労により微かに震える身体であっても、優雅さを感じさせる動きを見せる二人の腕が翻る度に、先程まで騒ぎ声を上げていた兵士たちが一人、また一人と地面に倒れていく。次々に兵士が倒れ込む姿に、しかし誰も騒ぎ立てようとはしない。中庭にいる全ての兵士と貴族の身体に薬が回り、頭が正常に働いていないためであった。最後に船を漕いでいたのは、豪華な椅子に座ったミスコール男爵であったが、キュルケの腕に導かれるように、腕が下ろされるのに合わせテーブルの上に顔面を叩きつけるように衝突させた。
ミスコール男爵が大きないびきを立て始めたとたん、キュルケとロングビルは腰が砕けたかのようにすとんと地面にへたり込んだ。互いの背を合わせ、寄りかかりながら雲一つなく晴れ渡る星空を見上げるキュルケとロングビル。
倒れこむように腰を下ろした二人に向かって、なみなみと水が入った大きなジョッキを二つ手に持ったルイズが駆け寄っていく。
手渡されたジョッキを一気に飲み干し、大きく息を着いた二人を見下ろすルイズは、スカートの下に隠していた三本の杖を取り出すと、持ち主であるキュルケとロングビルの前に広げてみせる。
「どうする?」
ひらひらと扇のように広げた三本の杖を揺らしながら、不敵な笑みを浮かべ短く問うてきたルイズに、キュルケとロングビルは一度目を閉じた後、開くと同時に勢いよく立ち上がった。
「置いていくわよ」
「早くしな」
何時の間にか手に自分の杖を握ったキュルケとロングビルは、三百人の兵士と貴族が眠りこける中庭に背を向け歩き出していた。
二人が向かう先には、月と星の白い光に照らされて、白く輝くアーハンブラ城、その天守。
手元に残った最後の一本―――自分の杖を握りしめ、ルイズは顔を上げる。今にも倒れそうなふらつく足取りで前を歩くキュルケとロングビルの背中に、ルイズは苦笑いを浮かべて走り出す。
この先にはエルフがいるだろう。
しかし、不安は感じない。
きっと大丈夫だと言う確信があるから。
みんなとなら、どんな相手であっても怖くない。
必ず、タバサとタバサの母親を助けてみせる。
決意を新た
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