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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第八話 エルフ
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 喧騒で溢れる中、笛の音が高く鋭く響き渡り、包み込むような小気味よい太鼓の音がそれに追従し。曲に導かれるように、松明の炎は揺らぎ、二人の踊り子を照らし出す。数十分休みなく踊り続ける踊り子の肌は、松明の炎と内から発せられる熱により吹き出た汗で濡れそぼり、身体に纏う薄い衣装が肌に張り付きそのグラマラスな身体の線を浮き上がらせていた。 

 踊り子が腕を振り、腰をくねらせ、足を蹴る度に、汗は雫となって振り注ぎ。炎に照らされきらきらと光る女の肌と汗に、兵士たちの目は奪われる。
 男たちは目の前で誘うように踊る極上の女の肢体に欲望を滾らせ、それを手に持った肉と酒で飲み下す。甘辛く味付けされた肉の味は濃く、しかしそれが冷えたエールと抜群に合い、兵士たちは運ばれてくる酒と料理を奪い合うように食べ、飲み干している。
 兵士たちが座る簡素な椅子とは違い、中庭の奥、しっかりとした造りの椅子に座る貴族たちもまた、テーブルの上に所狭しと置かれた料理に舌鼓を打ちながら、用意された酒を飲んでいた。その中にはミスコール男爵の姿もあった。最初は、旅芸人が作る料理などと口をつけようとしなかったミスコール男爵だったが、他の貴族が美味そうに食べる姿と、目の前に置かれた料理から香る匂いにつられ一口食べた瞬間、周りの兵士たちのようにガツガツと食べ始めたのだ。貴族席に用意された料理は、兵士たちに配られた料理とは違い手間がかかったものであったが、やはりどれも味が濃いものであったため、安物だと、貴族の口には合わん等と文句を言いながらも、ミスコール男爵たちもまた、運ばれてきた酒を次々に飲み干していっていた。

 宴が始まり、間もなく一時間が経過しようとしていた。
 料理を食う者、酒を飲む者、踊りを見る者、中庭での宴を楽しむ者たちの中に、頭をふらふらとさせている者たちの姿があった。中には突っ伏すように地面に転がり高いびきをたてている者もいる。踊りながらぐるりと中庭を見渡したキュルケとロングビルが視線を交わし合う。
 ロングビルが用意した眠り薬(スリーピング・ポーション)は、摂取してから約一時間で効き始めるものであり、一度眠りにつけば、例え耳元で竜が吠えても起きないと言われるほどの強力なものであった。
 そして間もなくその一時間が経つ。ロングビルとキュルケは残りの十数分を凌げばいい。だが、二人共体力の限界が近づいていた。激しい動作はないが、それでも休みなく身体を動かすことは、二人の体力を限界近くまで削り取っていた。特に、周囲で燃え盛る松明の炎の熱と踊りによって、大量の汗を流している二人は、何時脱水症状になってもおかしくなかった。何とか耐えられたとしても、今後の行動にかなりの支障があることは、容易に予想されるものであった。しかも、この場にいる全員を眠らせたとしても、一番の障害であるエルフがまだ
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