第五十三話 忠告は遅かった
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ルラウシュが利用されたと知って報復した、可能性は有るでしょう』
ベネディクトを殺したがっていた人間は俺が考えるより多いようだ。
『ミューゼル少将は何もしていませんね?』
俺? 驚いて最高司令官を見た。相手は笑みを浮かべて俺を見ている。
「小官を疑っておいでですか?」
『アルバート・ベネディクトが死んだ以上、エルフリーデ・フォン・コールラウシュを生かしておく必要は無くなりました』
「……」
『少将にとっては一石二鳥ですね。ベネディクトを始末する事で実行犯であるエルフリーデも始末することが出来る……。動機は有るでしょう』
そうか、そういう見方も有るのか……。先程帝国を外さなかったのは自分では無く俺を疑っての事か……。
「小官はこの件に関しては一切無関係です」
幾分強い口調で言うと最高司令官が軽く笑い声を立てた。
『そうですね、ミューゼル少将は本件には関係無い、分かっています』
分かっている? スクリーンに映る最高司令官は笑みを浮かべているがその笑みが意味有り気に見えるのは気のせいだろうか。俺を見張っていた? 或いは暗殺の指示を出したのはケッセルリンクの言う通り……。最高司令官が笑みを消した。
『帝国の立場ははっきりとしています。今回の一件、フェザーンがアルバート・ベネディクトを利用して帝国を混乱させようとした。それを闇に葬るためにフェザーンが口封じをした、そういう事です』
「……」
強くは無いが冷たい口調だった。
『まあこれで自治領主府に協力する馬鹿な商人は減るでしょうし貴族達も危険だと認識するでしょう。そうは思いませんか』
「小官もそう思います」
全てが分かった。この男はフェザーンがアルバート・ベネディクトの事を引き渡すなどと期待してはいなかったのだ、最初から奴を殺すつもりだった。
引き渡しを要求したのはフェザーンが口封じをしたと皆に思わせるためだ。フェザーンが引き渡しを渋れば渋る程ベネディクトが事件の黒幕であると、フェザーンがそれに関与していると皆は思うだろう。そして口封じの疑いは強くなる。ケッセルリンク、どうやら俺の忠告は少し遅かったようだな。お前達はこの男を怒らせてしまった。これからどうなるかはオーディンのみが知る事だろう。
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