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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十三話 忠告は遅かった
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どちらかだ。おそらくは後者だろうな。一つ釘を刺しておくか……。

「ケッセルリンク補佐官、忠告しておこう」
「忠告、ですか」
「あまり帝国を、ヴァレンシュタイン最高司令官を甘く見ない事だ。敵対する者に対しては容赦のない方だからな。今の反乱軍の混乱ぶりを見ればよく分かるはずだ」

ケッセルリンクがこちらをじっと見た。負けるものかと睨み返す。お前達も性格が悪いだろうがあの男の性格の悪さには及ばない。舐めてかかると痛い目に遭うぞ。
「……御忠告、確かに受けたまわりました。気を付けましょう」

応接室に沈黙が落ちた。お互いに相手の顔を見ている。どちらかが視線を外すか、言葉を出すべきなのだろうが黙って目を逸らすことなく相手を見ていた。どのくらい睨みあっていたか、暫くするとトントンとドアをノックする音が聞こえた。二人ともドアに視線を向けそしてまた相手を見た。

「申し訳ありませんが少し席を外します」
そう言ってケッセルリンクが席を立った。彼がドアを開け外に出るのを見てから大きく息を吐いた。何が起きたのかは知らないが奴が困る事なら大歓迎だ。意地悪くそう考えているとケッセルリンクが部屋に戻ってきた。顔が幾分強張っている。良い兆候だ。

ケッセルリンクが俺の前に座った。眼が据わっている、何が有った?
「ミューゼル閣下、残念ですがフェザーンはアルバート・ベネディクトを帝国に引き渡す事が出来なくなりました」
「……どういう事かな、ケッセルリンク補佐官」
帝国を完全に敵に回すつもりか、思わず声が低くなった。

「アルバート・ベネディクトが死んだのです」
「死んだ?」
「そうです、彼が乗っていた地上車が爆発しました。粉々に吹き飛びましたから遺体をお渡しする事も出来ませんな」
死んだ? 爆発? 自然死じゃない、暗殺……。

「口封じか! 卑怯な……」
俺の言葉にケッセルリンクが首を横に振った。
「自治領主府は何もしていません、何者かが我々の仕業に見せかけて謀殺したのだと思います。ベネディクトは敵が多かったですから」

フェザーンでは無い? 信じられんな。しかしアルバート・ベネディクトに敵が多かったのは事実だ。ケッセルリンクが俺をじっと見ている。何だ?
「思い当たる節が有るのではありませんかな、ミューゼル少将」
思い当たる節? ……まさか、帝国だというのか?
「帝国にはそのようなものは無いな。卿こそ思い当たる節が有るのではないか?」

またケッセルリンクが首を横に振った。
「私にも有りません、妙な言いがかりは迷惑です」
「卿に無くてもフェザーンが無関係だという事にはなるまい。違うかな、ケッセルリンク補佐官」
“補佐官”、その言葉に多少力を込めるとケッセルリンクが俺を睨んだ。
「それについては帝国も同様では有りません
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