九 黄塵万丈
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「ああああああああ!!!!」
隆々たる炎がリーを包み込んで炎上する。絶叫を上げながら彼は闘技場床を転げ回った。
しかしながら火の勢いはあまりにも盛んで、鎮火する様子など一向に見えない。
「リーッッ!!」
堪らず試合に割り込んだガイがリーに駆け寄った。なんとか火を消そうと愛弟子を抱き抱えようとするが、リーの身を包み込む炎がその手を阻む。じゅうう…と肉の焼ける匂いが鼻について、ガイは険しい表情でナルトを睨んだ。
ナルトはガイの眼光にも気圧されず、繊細な白い手で印を結ぶ。
「――――――――――解」
途端にリーの身体を包んでいた炎が一瞬にして消えた。
「な…!?」
ガイが驚くのも無理は無い。あれほど全身炎で焼かれていたリーの身体には、炎症のひとつも見当たらなかったのだ。加えて闘技場を蜘蛛の巣の如く覆っていた鋼糸も、最初から何も無かったのではないかと錯覚させられるほど綺麗に消えていた。
試合を俯瞰していた者達の疑問に答えるかのように、ナルトが口を開く。
「…幻術だ」
その言葉を聞いた者は皆が皆、疑惑の目でナルトを見つめた。
一体いつから幻だったのか。あの鋼糸も炎も臨場感溢れるものだった。炎で焼かれるリーの断末魔も、肉を焦がす匂いも、全てが本物だった。だがそれらが幻だったというのは、火傷ひとつ負っていないリーの身体が物語っている。
眼識・耳識・鼻識…といった六識全て誤魔化し、更には痛覚をも騙した幻術。木ノ葉随一の幻術使いである夕日紅でさえも、ナルトの技量に目を見張っている。
尤もここまでリアルに再現出来たのは、鋼糸も【燎原火】も実際にナルトが扱えるからである。
対戦相手たるリーは勿論、上忍含め観戦していた者達も、火影ですら今までの出来事が実際に起きたものだと思っていた。だからナルトに「幻術」だと告げられても、正直彼らは懐疑的な態度を崩せずにいた。
「勝者!うずまきナルト!!」
気絶しているリーとナルトを交互に見比べ、ナルトを勝者と判定したハヤテが声を上げる。ナルトはリーを守るように立ちはだかるガイを見据えると口を開いた。
「…八門の内四門まで開けたんだ。加えて俺の幻術は現実に起きたかのように錯覚させる。暫くは目を覚まさない―――――療養させたほうがいい」
そう告げると、彼は通り過ぎ様にガイに小声で言い放った。
「…過ぎた技は身を滅ぼす。その術を教えるのは時機尚早だったのではないか?」
下唇を噛み締めるガイを一瞥して、ナルトはその場を立ち去る。急ぎリーを運ぶ医療班を目の端で捉えながら、彼は悠然と君麻呂・多由也の許へ向かった。
半壊した闘技場ではリーの身体を慎重に運ぶ医療班だけが忙しく動き、観戦していた者達は何
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