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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六 胡蝶の夢
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にしたナルトの一言に、サクラ達木ノ葉の忍びはますます動転する。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どういうことぉ?」
チョウジまでもが驚いて声を荒げるが、ナルトは涼しげな顔で「俺達のチームの分は持ってるから」と答えた。
「そうじゃなくて!」
見当違いの答えを返すナルトに、いのが発狂したように髪を掻き毟りながら怒鳴る。何れも呆気にとられる木ノ葉の忍びの中で、ただ一人沈黙していたシカマルが呟いた。
「なにか…目的があるのか?」
独り言のようなその小声はナルトの耳にしっかり届いたらしく、彼は一瞬目を細める。
「……目的は君達に勝ち進んでもらう事かな」
「はあ?」
不可解な答えに再び困惑するサクラ達をよそに、シカマルは探るような目でナルトをじっと見つめていた。
「まあ、さっきの仲間を見逃してくれた手打ち料だと思ってくれ」
そう言ってナルトはくるりと背中を向ける。

忍びは易々と敵に背中を向けてはならない。にも拘らずこんな簡単に背中を見せるという事は、襲われないと確信しているからかそれとも絶対的な自信故か。
ナルトと対話したのは僅かな時間だったが既にその場の面々は、無防備に見える彼の背中に襲い掛かれば逆に襲ったほうの命が危ないだろうと満場一致の結論を内心出していた。


踵を返し掛けたナルトは何かを思い出したように一度足を止める。そして肩越しに振り返ると、「シカマル。ナルに頑張ってと伝えておいて」と名指しで声を掛けた。
いきなり自分の名前を呼ばれたシカマルが声を発する間も無く、「じゃあね」と一言残しナルトの姿は一瞬にして掻き消える。





夢か現かわからぬまま、木ノ葉の忍び達は無造作に散らばった数本の巻物を見つめた。その巻物のみが金髪の不思議な少年――ナルトが今まで存在していた証拠であった。

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