暁 〜小説投稿サイト〜
時のK−City
第二章
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
はな。どうにもな」
「これがなくちゃ話にもならねえしな。いい奴いねえのかね」
「そうだなあ」
 僕達はダンパで酒や煙草を手に席に座ってそんな話をしていた。周りは暗がりの中で赤や青の光がめまぐるしく動いている。客がその中で飛んだりはねたりしている。その中で話をしていた。
「久留米でいいバンドは大体見てきたけどな」
「フリーの奴でもいねえのかよ」
「いないな。これといったのがいない」
 リーダーはそう言って首を横に振った。
「だから悩んでるんだよ」
 募集はしているがやはり来ない。最後の最後で一番重要なのがいなかった。僕達六人はここにきて困り果てていた。
「御前ドラムやっか?」
「俺か?」
 髭に話を振ってみた。
「どうだ、これも目立てるぜ」
「悪いけど俺ドラムはできないんだよ」
 髭は困った顔をして左手を横に振った。
「あんなややこしいのはな。悪いができねえ」
「そうか」
「参ったな。どうしようか」
 リーダーはカクテルを口にした。モスコミュールだ。この時からこいつがかなりの酒好きだということがわかった。夜になるといつも飲んでいるようだ。僕も好きな方だがこいつ程じゃない。こいつはもう酒を飲むことが生きがいみたいな奴だった。こう書くととても高校生じゃないが。
 話をしている間に演奏しているバンドが変わった。はじめて見るバンドだ。
「今度はどんな連中だ?」
「どうせ大したことねえじゃねえのか」
 話を中断してそちらに目を向けた。すぐにドラムの音が聴こえてきた。
「おい」
 それを聴いて僕とリーダーは顔を見合わせた。そして同時に声をあげた。
「こいつは」
「ああ」
 感じていることは同じだった。僕達はまた頷き合った。
「いけるな」
「こいつしかいないだろう」
 他の連中はどうでもよかった。ドラムだけを見ていた。細い目をしたやけに愛嬌のある顔立ちの奴がそこにいた。僕達はこいつしかいないと確信した。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ