第二章 [ 神 鳴 ]
二十八話 諏訪の行方…
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目の前に広がるのは銀色の草原。見渡す限りの銀色の世界に僕は立っていた。
「……豪く久しぶりに此処に来たなー、来たって言うよりは見てる、の方が正しいのかな?…まぁいいか」
空すらも銀色に染められている此処は僕の心象世界。最後に見たのは、はて?どの位前だっただろうか。たぶん色欲が使えるようになった時が最後だから……やっぱり分からないや。
僕がそんな詰まらない事を考えていると風など吹かない筈の銀の草原に突風が起こり一瞬だけ僕の視界を奪った。そして風が凪いだ草原によく知っている金色の髪の少女が立っていた。
「…諏訪子?」
じゃないな、たぶんコレは強欲《マンモン》で僕が取り込んだ祟りの塊か。もしかして此処に来たのはこの子が原因なのか?
とりあえず僕は目の前の諏訪子の肩に触れてみる。すると銀の世界が一瞬で黒の世界に変わり、触れていた諏訪子が黒に融けるように薄れていく。そして黒の世界に光が弾けた。
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何時自分が確立したのか、あたし自身にも記憶が無い。でも自分が何者なのか、何をしなければならないのか、それは自然と理解できた。
だからあたしは民達に見せ付けてやったんだ、あたしの祟りの力を。そのお陰ですぐに信仰は集まったし、他にも神は居たがあたしの敵じゃなかった。
そして何時の間にかあたしの国が出来ていた。何もかもが上手くいっているとその時は思っていたんだ。
何時の頃からかあたしは民達の視線に苦痛を感じ始めていた。畏怖、恐怖、信仰心とは別にあたしに注がれるその感情が嫌で仕方なかった。
その原因は分かっていた。未だに消えない祟りが大地を殺し続けているせいだ。当初あたしは祟りををすぐに消すつもりだった。でも自分の力なのに祟りは消えてくれなかったのだ。
それ以来その土地はあたしの罪の象徴として存在し続けている。何時祟りが消えるかはあたしにも分からない。
それから二百年は経った頃に漸く祟りが消え死の土地はあたしの能力で活力を取り戻した。そしてあたしはもう二度と祟りを使わない事を心に誓った。民達にあんな感情を向けられるのはもう嫌だから。
その頃だっただろうか、森を散策していたあたしは妖怪に襲われていた一組の夫婦を助けた。その夫婦は自分達の国が戦に巻き込まれ此処まで逃げてきたらしい。そして助けられた恩を返すといってあたしに仕える事になる。
それがあたしの巫女である東風谷の始まりだった。民達の畏怖も薄れ、あたしの巫女、いや家族との日々は幸せだった。こんな幸せがずっと続けば……
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