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第二十一話 不安と希望
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気になさらず仲良くしていただけると嬉しいです」
自分で言いつつ、気にしないなんて無理なんだろうなと思ってしまう。それはこの場の空気が証明している。今までの生徒の自己紹介と違い、僕の言葉が終わってもパラパラと拍手があるのみ。
簪さんのように、僕のことを嫌っているような空気でないのは救いだけど、それでも戸惑いのようなものが充満している。……やっぱり一朝一夕では馴染めそうもない、か。
時間が進むにつれて重くなる気持ちに耐えつつ、僕は席に座る。
「更識……簪。……専用機は……まだ未完成」
続く簪さんはただそう言うと席に座ってしまった。あまりに素っ気ない自己紹介にさらに場の空気は微妙なものとなる。
「え〜っと、彼女は日本の代表候補生でもあるのよ。それに、現生徒会長の更識楯無さんは彼女のお姉さんね」
フランシィ先生が見かねてフォローを入れるが、それは失言だと思う。後ろから感じる気配が揺れたのがわかる。今頃、彼女は先生を睨んでいるんじゃないだろうか……彼女は楯無さんと比べられるのを極端に嫌う。それどころか、話題に出るのも嫌なようだ。
そんな簪さんを見てか、クラスメートは固まってしまい静寂に包まれる。僕は慌てて拍手をすると、それにつられてパラパラと周りも手を叩く。
「さ、さぁどんどんいきましょう」
さすがに何かを察したのか、フランシィ先生が慌てて次を促す。その間、ミュラー先生はこちらに視線を向けている……何か嬉しそうな笑みを浮かべているのは気のせいだと思う。
その後も空気は変わらず微妙なままだったが、自己紹介はなんとか進行して無事に終わる。
このクラスは僕だけでなく、いろいろな爆弾を抱えているようだ……。簪さんのこと、クラスメイトとのこと……もちろんそのあとは他クラスの生徒も、そして……ミュラー先生はよくわからないけどちょっと警戒しておこう。初日でいきなり増えた問題に僕は思わずため息が漏れた。
授業自体は問題なかった。というよりもやはり一年前に既習な上、初日で難しいことなんかやるはずもないので割と退屈なものとなってしまった。とはいえ、真面目に授業は受けざるを得ないのだけど中々に辛いものがある。
昼休みになると、周りのクラスメートは近くの生徒と声を掛けあって食堂に向かったり弁当を広げたりしている。当然というか、こちらに向かってくる生徒はいない……やっぱりちょっと悲しい。
断られること覚悟で簪さんを誘ってみようかと思い後ろを振り返るも既に姿は無い。仕方なく僕は一人で食堂に向かうことにした。すると道中で楯無さんとフォルテさんに出会う。どうやらこの状況を見越して誘いに来てくれたようだった。
「やっほぉ、紫音ちゃん。よかったらお昼一緒にどう?」
「はい、丁度一人
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