暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第34話 『ラッパのラ』
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はは彼のほうを向く。
「シン“パ”イされるよりシン“ラ”イされたい。ラッパのラの音は大人には届かないということです」
「……あ」
なるほどとなのはは頷く。フェイトは今、信頼したい気持ちよりも心配したい気持ちのほうが大きく、エリオたちを過保護に扱っているのだ。育てるときは、そのジレンマをうまく調節しなければならない。
「フェイトさん、僕たちのこと信頼してください」
「大丈夫ですから」
「う、うん……でも……」
言われて自覚してもまだ揺れ動いており、眉根を寄せてなのはを見る。
「大丈夫だよ。エリオたちはしっかりしてるから」
「う、ん」
次に、コタロウを見た。
「テスタロッサ・ハラオウン執務官は御二人をどう思われたいのですか?」
「え、っと、信頼したいです」
「では、信頼なされればよろしいのでは?」
彼は彼女が選んだほうを推す。
「でも、心配もしています」
「では、心配なされればよろしいのでは?」
彼の答え方は変わらない。
「でもでもっ、信頼したいんです」
「では、信頼なされればよろしいのでは?」
最初と同じ応え方だ。
「でもでもでもっ! 心配もしているんです!」
「では、心配なされればよろしいのでは?」
フェイトがすこし語尾を強めても、彼は変わらない。
「……ムゥ! 信頼だってしています!」
「では、信頼なされればよろしいのでは?」
「あの、フェイトさん、コタロウさん。その辺で」
「フェイトちゃん、落ち着こう?」
依然として彼の無表情で淀みない受け答えはフェイトの頬を少し膨らませ、目を潤ませることになった。コタロウを除いた人たちがフェイトのその表情を可愛いと思っても口には出さず、やんわりと彼女をなだめようとする。
「う〜〜、コタロウさんはいじわるです」
「私がいじわる、ですか?」
これではいつ決着がつくかもわからないと感じたなのはは、
「それじゃ、エリオ、キャロ。いっぱい楽しんできてね?」
『は、はい!』
話題を切り上げる切欠として2人を送り出した。
さすがにそれにはフェイトも逃すわけにもいかず、
「ご、ごめんね。なのはの言うとおり、楽しんできて。心配だけど、信頼もしてるから」
『はい!』
取り繕って笑顔で応えた。
「それでは――」
「いってきます」
笑いかけたフェイトに、エリオとキャロも安心して気分を取り戻した。フェイトの隣にいるコタロウに笑顔を向けて歩き出そうとし、
「いってらっしゃい」
笑顔で送り出すコタロウに驚いて躓きそうになった。
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