暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第2章 『ネコは三月を』
第29話 『季天鋏』
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デバイスを隠す。


「それはできません。あくまで分子同士を近づけたり、離したりすることだけです」


 コタロウは誓いに近い強さで否定する。
 彼にしては珍しく言葉に力の入ったものだ。
 はやてがぎこちなく頷くのを見て、コタロウは傘を手に取り、和傘に変えて上下に数回振り抜く。そして、そのまま右足を前に出しながら、上から斜めに傘を振り、左足を移動させながら真半身をとる。そこでは既に傘は形状を変え槍のような野点傘に変わり、中心を持って2回転、3回転。さらに腕を内側に巻き込み身体を回転させ、傘を握る手が口元まで来る時には、傘は折りたたまれ小型化されていた。
 進行方向は常に変わらず一直線であったが、彼の身体は独楽(コマ)のように回転し、その間傘は、例えるならば剣、槍、短刀へと形状を変えていく。彼の発言による命令がなかったことから、どうやら口に出さなくても傘の形状は自由に変更することができるようだ。
 傘の形状変化のパターンをいくつか変えながら、歩みを進退する足捌きをスバルたちはみたことがなかった。
 なのはたちのみが、


『(武道の動き?)』


 と、親近者である人や学生時代の部活風景で出てきた人、またはテレビでも機会があれば見たことのある動きによく似ていると感じた。
 コタロウがその動きを終えると、ぽつりと声を漏らす。


「命中力の確認もしておこう」


 傘を自分の身長の3、4倍高く放り投げると位置は動かずに、先ほどとは比較できない速度で、また独楽のように回り始めた。
 彼の周りの粉塵が僅かに回転にあわせて舞い上がる。
 そして、傘もまた回転しながらコタロウと同じ位置まで落下すると、彼は柄を掴み、


「――ンッ!」
『……え?』


 方角としては隊舎に向かって突き抜く。
 以前みたことのある動きを傘はする。遠心力と彼本来の力によって弾きだされた傘は主人の手元を離れずに中棒が伸び、隊舎の屋上に向かって真っすぐ突き進んでいく。
 音はそう、カートリッジロードしたときのような音だ。
 そして、遠目で見るとあれはおそらく避雷針だろうか。それと交わったのを確認してから、彼は傘が自重で(しな)る前に逆の動作を行ない、傘を引き込んだ。
 傘が戻るときの音はまた違い、金属のタガが外れ収納される音である。最後に「かち、ん」という音を漏らし、通常の大きさに戻る。


「ふむ。問題なし」


 お待たせしました。とコタロウはフェイトのほうを向き、丁寧にお辞儀をする。


「それでは、試験運転及び動作確認の条件をお話させていただきます」
「……え、あ、はい」


 フェイトを含む周りの、特になのはやスバルたちは半ば、何かを諦めたように息を吐いた。


[あのね、
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