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派遣社員ハイパーれいじ
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ではバスにも乗りづらいし、何より混雑したあの狭い空間に持ち込むわけにも行かない。田舎者だと睨まれるのも少々癪に触るのだ。交通費が少し手痛いが必要経費とする。仕方ないのだ、元々は辞令を出してきたのが悪い。
 脳内でだらだらと悪態を垂れつつ駅前へ。その前に軽く売店によりサンドイッチとコーヒーを購入。朝食が朝早くで多く取れなかったため少々小腹が空いていた。ツナサンドとミックスサンドをコーヒーで一気に流し込み二度目の朝食終了。タクシーを拾っていざ新天地へ。黒塗りのいかにもなタクシーに荷物を詰め込む。

「お客様はどちらまで?」
「管理局の地上本部まで、お願いします」
「地上本部ね」

 そう言ってゆっくりタクシーが発進。エンジンとラジオの音を聞きながら、そう言えば最近は車も運転していないなと実家のマイカーに思いを馳せる。仕事詰めでロクに帰省も出来ず今頃埃を被っているかもしれない。妹が手入れでもしてくれてれば良いのだが。

「お客さん地上本部言いましたけど、あの大荷物だと異動ですか?」
「ええ、まぁそんなところです」
「大変ですねぇ。最近はどこもかしこも人手不足。よく愚痴るお客がいるんですわ」

 からからと乾いた笑いをする運転手に、彼は「はぁ」と曖昧な返事を返した。確かに人手不足なのはどこも同じだ。それを笑うのはどうかと思うが。

 なんだかんだで二〇分が過ぎようとした頃、ようやく地上本部前までやってきた。都会だけあって通勤ラッシュの時間帯はやはり相当混むらしい。

「頑張ってくださいねぇ。地上本部はブラック企業だーなんて噂も流れてるもんですから」
「物騒ですね。そうでないことを願うしかなさそうですけど」

 ありがとうございました、と運転手に告げて下車。荷物を両手に空高くそびえる地上本部ビルを見上げて彼は目を細めた。何となくそれが究極の壁に見えたように思えて、

「……ブラックじゃありませんように」

 思わず呟いた彼は、悪くない。










 受付で派遣された(うま)を伝えてしばらく。フロアの端の端にあるソファに座ってボーッとしていた。何でも担当者が後に到着するまで待っていてほしいそうだ。その担当者が急な都合で到着が遅れているとのこと。幸先が不安で仕方なかった。

「スンマセン、グランセニックです」
「あ、お待ちの方ならあちらで……」

 まだ残っていたコーヒーを飲み干していると、受付の方から一人若い青年が歩いてきた。自分と同い年かそれより上くらいか。軍服にジャケットとなると正規隊員の人なのかもしれない。

「えーっと、アキタニ レイジさんで間違いないですか?」
「はい。貴方は担当の方で?」
「ヴァイス・グランセニック陸曹です。よろしくお願いします」

 浅
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