暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第19話 『今日という日この時からは』
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です。捜索ありがとうございます」


 ティーダは何故棺が1つしかない理由に納得すると静かに息を吐き、足元に目を向けると、橙の髪がふるふる震えているのが見えた。
 生きている人間より死んでいる人間のほうがこの場には多いのだ。ティアナも意味は分からずとも何かを感じ取っているようだった。


「ティア」
「……」


 手続きはのちほど行ないます。と案内人に棺を閉じてもかまわないと促し、もう一度、今度はしゃがんで妹に呼び掛けた。


「な……に、おにいちゃん」
「パパとママは起こされたくないんだって、このまま『さよなら』をしようか」


 疑問形にはせず断定するとティアナは兄から白い棺に視線をうつし、彼の袖をきゅっとつかんで抱きつき、


 「……うん」とうなずく。


 ティーダは彼女を抱き上げて、一歩、また一歩と両親から遠ざかる中――ティアナは決して顔を上げなかった――初めて自分の手に持っている遺留品に気が付いた。
 それはランスター家の棚に飾っている1枚の写真と同じもので――後々、それ以外は見つからないと知る――裏に書かれているなぐり書き数々の中から(かろ)うじて読める3単語を見てティーダは固く決心をした。



『ティーダ ティアナ たのむ』






△▽△▽△▽△▽△▽






 それ以降ティーダは妹が『死』というものを知る過程を見守り、幼いながらもそれを懸命に乗り越える過程を見守り、時々夜中に泣きながら自分のベッドに入り、涙を自分の服で(ぬぐ)うのを見守った。
 時々突き放すような言い方をした時もあったが、彼は後悔はしていない。それが妹を強くすると信じて疑わなかったし、彼女はそれに応えた。


「ほらっ! 兄さん、起きて!」


 だから今の彼女がいる。


「私も学校があるんだから〜」


 ティアナは、もう無断でベッドに入り込んだりはして来ない。
 今は寝ているティーダの腰をつかんでごろりごろりとお構いなしに左右に揺らす。


「あと――」
「ちょうど、私の右手には包丁が握られています」


 それはまずいとばかりにもぞりと体を伸ばして、伸びをしていると、


「そして、左手には兄さんの作った銃があります」
「だんだんと、過激になってないかい?」


 あくび1つといくつもの寝癖(ねぐせ)(たずさ)えて、むくりとティーダは起き上がり、髪をしっかりツインに整えたのティアナに目を向けた。


「ん。おはよう、ティア」
「おはようございます、兄さん」


 気づけば今年でティーダは21歳になり、ティアナは10歳になっていた。






△▽△▽△▽△▽△▽
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