暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜困った時の機械ネコ〜
第1章 『ネコの手も』
第19話 『今日という日この時からは』
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に、心配する人間は居ない。もちろん、学校に行かなければ心配する人間はいるかもしれないが。


「…………」


 彼女は無言を耐えるところまで貫いた。


(…………)


 それは思考も同様である。
 日は跨いだ。
 しかし、時計なんてものは持ってはおらず、彼女の手に握り締められているのは見た目は(すす)けても軽やかになるオルゴールのみ。
 そして、力無くそのオルゴールを手放したとき、


「……ぃ、ゃ」


 彼女は胸の奥でじわりと熱くなるのを感じた。


「な、んで……」


 答えるものはいない。


「……ぃゃ、ょぉ」


 歯を食いしばろうとも思わなかった。


「いや、だよぉ」


 声が一段を大きくなる。


「いやだ、いやだ、いやだよぉ! なんで、なんでなのぉ」


 (かぶり)を振っても、人は訪れない。
 ここには彼女1人しかいないのだ。
 人目を気にせず、膝をつけて四つん這いになって、土にごちんと打ち付けても、人目がそもそも無い。


「……ょぉ」


 墓標に抱きついても止めるものもいない。


「会いたいよぉ。会いたい、会いたいよぉ」


 死んだ人間は生き返りはしない。


「う、う、うわぁーーーん!」


 『死』を知っている彼女は大声で泣き叫んだ。
 声が()れるまで何度も何度も同じことを繰り返し、彼女はここで新しいことを学ぶ。




 ごろりと泣き疲れ、寝転んだころには既に明け方になっており、ほんのりと明かりが差していた。雨もやんでいる。


(そっか。言葉に出しても、何も変わらないんだ)


 彼女は知る。


(自分が何かをしようとしない限り、何も変わらない)


 口をぱくぱく動かしても、嗄れた声しか出ない。


(自分から動かない限り、何も変わらないんだ!)


 彼女はびしょびしょに濡れた服など気にもせず、ごしごしと顔を拭うと思い切り立ち上がった。
 手放したオルゴールを手にとって、空を見上げる。
 ぎゅっとオルゴールを握り締め、嗄れた声で決意する。


「兄さんの夢、私の夢にしてもいい?」


 墓標は何も答えない。
 それを確認した後、彼女は墓標を振り向くことなく、歩き出し、気付けば走り出していた。
 振り返るわけにはいかない。
 ティアナ・ランスターは何せこれからは血縁なく、1人で生きていかなくてはいかないからだ。


(1人で生きていかなくちゃいけないんだ、『今日という日この時からは』!)






△▽△▽△▽△▽△▽





「私ね、スバル・ナカジマ。スバ
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