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哀しくてジェラシー
第一章
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第一章

                     哀しくてジェラシー
 好きだ。それは間違いない。
 けれどだった。俺達はいつも喧嘩ばかりしている。この日もだった。
「だから何でなんだよ」
「何でって何よ」
「何であの時電話に出なかったんだよ」
 昨日の話だ。夜に俺が電話をかけても出て来なかった。このことをこいつに言う。
「何かあったのかよ」
「お風呂に入ってたのよ」
「嘘つけ」
 俺はそのことをすぐに否定した。
「どうせ他の男と会ってたんだろうがよ」
「何でそんな風に考えるのよ」
「御前最近バイト先でな」
 こいつのバイト先は知っている。美容店だ。こいつは見習いでそこに通っている。俺も当然そのことを知っていて言っているわけだ。
「やけに格好いい客がいるって言ってたよな」
「その人と会ってたって言いたいの?」
「そうじゃねえのかよ」
 俺ははっきりと言ってやった。
「昨日だってな」
「その人とはお話するだけよ」
「話だって!?」
「そうよ、それだけよ」
 こいつはあくまでそれだけだという。言い張ってさえいる。
「その人彼女いるみたいだし」
「そんな話初耳だぞ」
「今はじめて言ったからそれも当たり前でしょ」
 半分売り言葉に買い言葉だった。俺もこいつもだ。
「大体ね」
「大体?何だよ」
「あんただって」
 俺のことも言ってきた。
「この前」
「何だよ、この前ってよ」
「あの娘と話していたじゃない」
 こう言ってきた。俺に対してだ。
「そうでしょ?凄く嬉しそうに」
「あの娘って誰なんだよ」
「だからあの娘よ」
 今度は俺が守る側だった。立場が入れ替わっている。
「あの娘とよ。どうなのよ」
「だからあの娘って誰なんだよ」
「この前居酒屋で話してたじゃない」
「居酒屋!?」
「そうよ、そこでよ」
 そこでの話だという。少なくともこいつの口ではだ。
「ポニーテールの可愛い娘とよ。思い出した?」
「ああ、あいつか」
 それを言われてだった。やっと思い出した。その相手が誰なのかを。
 そうしてだった。俺は少し言葉を置いてから。そのうえで答えた。
「あいつのことか」
「ほら、あいつなんて言って」
 それを話すのだった。
「それだけ仲いいじゃない」
「あいつは俺の従妹だ」
 このことを教えてやった。これは本当のことだ。
「子供の頃からの付き合いなんだよ。それで何でそんなにつっかかるんだよ」
「そんなこと早く言いなさいよ」
「言う前からだろ」
 俺は反撃に出た。こう言ってやった。
「その前からつっかかってきたじゃねえかよ」
「そうだったかしら」
「人の話はちゃんと聞け」
 俺は目を怒らせて告げてやった。
「ちゃんとな」
「そういうあんたもね」
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