第一物語・後半-日来独立編-
第六十二章 覚醒せし宿り主《2》
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に突き刺さった刀に視線を向けた。
竜神の力を携えた刀。
美しくも、奏鳴には恐ろしくも見えた。
冷たく太陽の光を反射し、冷気を放っているかのように寒々としている。
『己の力、得るならば抜刀せよ。さすれば貴様を宿り主として認めよう』
刀から脳裏に反響するかのように聴こえた。
竜神の声。
深く、力強い声。
身体に流れる血が反応したかのように、血は熱を帯び、体温を高めていく。
緊張と恐怖の二つの感情が沸き出し、煮えるかのような感覚を生む。
額に浮かぶ汗が、それを証明していた。
『だが、もし抜刀すること叶わなければ、己を保つ糧として命を貰い受ける』
容易に命を口にした。
神にとって人間とは、その程度の存在なのだ。
人間は人間を管理するための道具に過ぎない。
そんな神であっても奏鳴には竜神という存在のみに力があり、彼女自身には何も無い。
今はただ試練を乗り越える。
抜刀出来無かったことなど考えるなと言い聞かせ、必死に震えを堪える。
セーランに心配は掛けられない。一人で、一人でやらなければ意味が無い。
「見くびるなよ竜神。何時までも大人しいままだと思われては困る」
強くあるためにはどうしたらいいのか、ずっと迷っていた。
髪を伸ばしたのは強そうに見えると思ったから。男のような口調なのは相手を威圧するため。
しかし結局、どんなことをしても強くはならなかった。
剣術を鍛えても、精神を太くしても。
でも、ある時気付いた。
自分には寄り添える者がいないのだと。
弱さを見せ、共に強くなろうとする者がいないと。
かつて家族がいた時は父に憧れ、兄を越えるため日々競い合い、姉と妹とで息抜きをし、母には悩みを話していた。
急に途絶えた当たり前だった日々。
失った日々が、奏鳴が変わるための勇気を奪っていった。だが今は違う。
独りだった彼女には寄り添う者が出来た。
彼の共にあるため、そしてこの辰ノ大花を守り通すため。
この命を賭ける。
「意思の力と言うものを見せてやろう!」
竜神へ、央信へ向かって発言する。
今の自分を見せ付けるかのように、竜神の力を手に入れ、勝つ。
迷いは無かった。
後ろで待っているセーランが支えてくれているのが、無言であっても分かっていたから。
掴む。
空から落ちし刀を。
離さないように力強く、甲板から引き離すように引いた。
重い。
ずっしりと手に来る重みと、極度の緊張状態に感じる重圧が身体を襲った。まるで体重が数十倍も跳ね上がり、空気抵抗が強くなったかのようだ。
それと同時に後から来たもの。幾度も、奏鳴にはこの感覚に覚えがあった。
暴走状態へと向かう時の感覚にそっくりだ。
誰かを憎むような邪悪な力に身体が
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