第一物語・後半-日来独立編-
第六十二章 覚醒せし宿り主《2》
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竜神と向き合う時は、何時かは来るに違いない。
それが今、この場なのは仕向けられたことなのかと。
過去との決別を意を表す、天桜の長との戦い。
「本当にいいのか」
「こうするしか他に無い。何処までやれるか分からないが、単純な力比べならば竜神も比毛を取らない筈だ」
息を飲み、黙り混むセーラン。
信じられないわけではない。が、セーランは心配でならなかった。
暴走した奏鳴相手に戦う覚悟ならばある。
如何なる状況になろうとも戦う覚悟がある。だが奏鳴はどうなのか。
再び暴走してしまった時、一人で立ち直る力はあるのか。
甘えたままでは昔と何も変わらない。変わらなければ、驚異には立ち向かえない。
「もう弱かったあの頃の私ではない。――信じてくれ」
「……無理だと思ったらすぐに止める。それでいいな」
「構わない。その代わり、央信とは一人でやらせてくれ。この事態は私が招いたようなものだ。だから、自分自身で終止符を打ちたい」
「意気込みは完璧、か。なら行ってこい」
「すまない」
「謝んなって。あっちは礼儀正しく待ってんだ、相手して来い」
口を挟まず待っている央信。
まるで奏鳴が出てくるのを待つように、それに応え奏鳴はセーランを越え、前に出る。
華空の船首に近付く奏鳴の後ろ姿を見て、セーランの青い右腕は流魔へと還っていった。
足音がこれから行われる二人の長の戦いを告げる序曲のように鳴り、静かに始まりを伝える。
穏やかだった。
空も地上も、見えぬ海さえも。
不気味な程に穏やかで、嵐の前の静かさと同じだ。
何もかもが息を潜め、ただ時が流れるのを感じている。
そんななか、相手に対して宣戦布告したのは奏鳴だ。
咆哮を上げる竜の如き声が響き渡った。
「私の前に立ちはだかるのならば、全力を持ってお前を倒す! 戦う勇気があらば、一対一の真剣勝負――受けてもらうぞ!」
覇気の込もった一声は確かに央信に届き、にやりと央信は笑った。
勝つ自信があるからか、単に馬鹿にしているのか。
だが、どちらにせよ答えは決まっていた。
圧し返すように央信は答えた。
「いいだろう。宇天長からのその勝負、我、天桜長が買ってやる」
上から見下ろすかのような口振り。
相変わらずだ。
言うなり、央信は自身の左右に表示した映画面|《モニター》を割り、手を突っ込んだ。
映画面には拡張空間の文字が表示されており、腕を抜き手を抜く後に、握られていたのは槍。
左右どちらの手にも槍が握られ、双槍を振り回し、構えを取った。
空気を切るかのように回された二本の槍に、流魔が徐々に宿っていく。
攻撃の準備に入ったのだ。
交代するように、今度は奏鳴が動いた。
彼女の力は竜神しかない。だから奏鳴は竜神に
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