諦観の元に
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想いが上、などと優劣をつける事など出来はしないが、幽州での彼と白蓮達の仲の良さを、朱里は繋ぎ役の大本となる軍師であった立場故にほぼ全てに於いて知っている。だからこそ、秋斗に対して思い入れを持ってしまうのも不思議ではない。
無感情で無機質な黒が渦巻く瞳の奥を見た朱里は目を逸らし、戸惑いながらも問いかけの答えを口にする。
「……はい。我が国である徐州は現状で戦、それも遠征に赴ける状況ではありません。赴任して早々の戦に民から不満の声が上がる事は先の反董卓連合でも明らかとなったはずです。
何より袁家対立の噂から聞く通りに、幽州侵攻を決めた袁紹派に対抗して、急ぎで袁術派が私達の国に攻め込む危険性があるからです」
悲痛な面持ちで事実を語られ、鈴々はここまで言われて全てを悟ったようで口を噤んだ。その様子を見てから雛里が静かな決意の輝きを放つ瞳を携え口を開いた。
「私も同意見です。大陸の現状を鑑みるに公孫賛様の国へ救援に向かう事は出来ないと思われます。今は内の安定と外への警戒に力を使い、この先を見据えて耐える時となりましょう」
最後に雛里は己が想いを寄せる男を見つめる。彼にも言い聞かせるように。
彼女の心遣いを間違わずに受け取った秋斗は、そのまま雛里の予想だにしない驚くべき言葉を口にした。
「桃香、お前が望むなら助けに行けるぞ」
瞬間、ばっと顔を上げて秋斗を見た桃香は、すぐさま苦しげに表情を歪ませてその顔を伏せた。
甘い誘惑……ではなく、彼は残酷にも真っ直ぐ現実を突きつけた。
己が治める国の民を犠牲にして他国を救うなら今しかない。何を於いても救いたい者であるならばそれを選べ、と。
雛里は彼の言葉を聞いた途端に表情を曇らせ、目に涙を溜めた。
どれだけの想いを呑み込んで、どれだけ自分を殺してその言葉が紡がれたのか。どれほど心を砕いて一人の王の成長を助けているのか。
本当なら今すぐにでも助けに行きたいのは彼も同じであるのに、自分から口にすることで桃香に対して先の戦後に行われた問答をより強く思い出させた。
現実となった事実を突きつけられた桃香は、ただひたすらに震えていた。
自身の友を切り捨てろ、そう己が近しいモノ達に突きつけられているのだ。
いつかの、白蓮の言葉が頭に響いた。己が国が安定していないのならば助けにくるな、と。
桃香は悩んでいた。大切な友達、それを切り捨てる事など出来はしない。
しかし、彼女が選んだ今の自分はその選択を許してはくれない。自身を慕ってくれる民、仲間がいるからこそ。
苦悶と絶望が心を蝕む中、縋るように信頼する仲間に希望が無いかと問うてみた。
「……白蓮ちゃんの国だけで勝てる可能性は……どれくらい、なの……?」
掠れた声はその場にいる、一人を除いて全員の胸を締め付けた。
「……桃
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