諦観の元に
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した」
しん、と痛い程の静寂が室内を包み込んだ。愛紗と鈴々は目を見開き、言葉を発する事が出来ず、桃香はただ顔を伏せた。
「そして、これに対して我が軍が動くべきなのか、それとも静観を貫くのか、皆さんの意見を聞かせてください」
「助けに行かないとダメなのだ!」
跳ねるように声を上げたのは鈴々。彼女の性格ならば、真っ先にそう言うであろうことは誰もが知っていた。
それを見た愛紗は口を噤む。苦い表情からはこの軍が今の現状でどうすべきかを既に読み取っているのが分かる。一瞬、目を伏せた後に口を開く。
「私は、今回助けに向かうべきでは無いと、思います」
「どうして……どうしてなのだ!? 公孫賛のお姉ちゃん達は鈴々達を助けてくれたし、恩も返すべきなのだ!」
噛みしめるように言葉を区切って愛紗が言うと、鈴々が尤もな意見を述べた。
しかし、確かに白蓮達には世話になったが、ギブアンドテイクが成立している。義勇軍時代の恩恵は数多の政策と代わりの賊討伐、烏丸に対しての牽制と時間稼ぎ、黄巾討伐への代理出撃で清算しているのだからもう返す必要は無い。
何よりも、、白蓮が承諾した時点で契約が成立している。
ただ、桃香の心持ち一つで変わるだけ。
この時代の恩とはそういうモノ。ここからさらに恩を返せと自分から喚く者は集りにしか見えず、まさしく自分の事しか考えていない暗愚な王と取られる。
秋斗は鈴々の様子を見て、重苦しい表情をしながら、静かに声を流し始めた。
「鈴々、一番行動を共にしていた俺から言おう。白蓮達への恩返しは既に終わっていた。今後、恩がまだあるかどうかを決めるのは桃香の心持ち次第になる」
「でも――――」
「それに、今の俺達の現状を考えた上では、例え恩があろうと無かろうと参加すべきでは無いというのが俺の意見だ。そうだな、朱里?」
続けて言葉を返そうとした鈴々を遮り、己が意見を話してから朱里に問いかけた。
先を向けられた朱里はビクリと肩を震わせてから秋斗に悲哀の瞳を向け、さらに彼の瞳を見てしまった事で余計にその色が深くなった。
この場においては、確かに全員が白蓮達の世話になったと言える。
だが、桃香と秋斗の二人が今回の報告に感じる絶望は二人以外に測る事は出来ない。
友であるが故にその絶望は深く、助けに行きたいと願う想いは誰よりも強い。
桃香の場合、旧知の友であり、人格形成の時機に仲良くなった友人であり、理想に対しての一番初めの理解者と言っても良かった。更には自身の理想に対する足がかりを作ってくれた相手でもあるのだ。
秋斗の場合、理不尽に落とされた世界で、初めての居場所と言っていい地が幽州であり、彼にとっての一番の安息は白蓮の治める幽州と言えた。右も左も分からない世界での初めての友、心から笑える場所。
どちらの
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