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乱世の確率事象改変
高みに上らせるは鳳と月詠
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と詠さんが私が言うべきだと無言で促してきた。
「し、秋斗さん。その……一緒に寝ましぇんか!?」
 恥ずかしいけど、その言葉を放つ。
 人の温もりは安らぎを与えてくれる。辛い時に誰かが隣にいるだけでも安心が心に湧いてくるから。
「……さすがに年頃の女の子と夜を共にするわけには――――」
「だ、か、ら! 間違いが起きないようにボク達も一緒に寝てあげる。勘違いしないでよね。あんたが壊れたら、ボク達が望む未来も見れないんだから」
 ビシリと指を立てて語る詠さんの言に秋斗さんは悩み始めた。真剣な話をしていたのにどうしてこんな事に、という様に。
 その間に私は少し勇気を出して彼の寝台に上がった。それを見て二人も寝台に上がる。身体の大きな秋斗さん用の寝台は大きめだから、どうにか四人で並べそうだった。ただ……かなり密着する事になるが。
「狭いから無理だろ」
「ふふ、秋斗さんが雛里ちゃんを抱きしめたらいいんですよ」
「ボクと月もくっついて寝るしそれでいいでしょ」
 もはや彼には逃げ場が残されてはいない。
 別の部屋に行く選択肢は先程からのやり取りで封じる事が出来る。
「……いや、ダメだ。さすがに看過出来ん。お前達が動かないなら俺は別の部屋で――――」
「一緒に寝るのを……罰としましゅ」
 きっと顔が赤くなっているだろう。きゅっと目を瞑って、手を胸の前で握ってそう告げると、
「……分かったよ」
 漸く観念したようで、私の身体は彼に暖かく包み込まれた。
「あわわ」
 思わず、口癖が突いて出た。恥ずかしい、でも幸せだ。
 彼の二の腕を枕にして、大きな手で頭を撫でられ始める。自分の背には詠さんの背中があたりじんわりと暖かさが伝わって来た。
「なんかすごい状況ね」
「そうだね。でもこういうのも楽しいよ。こんなに大勢で寝るのなんて初めてだから」
 苦笑気味の詠さんの言葉に月ちゃんが楽しそうな声で返す。
 私はそんな会話に入れるような状態ではなかった。
 大好きな人に抱きしめられて寝台にいるんだ。鼓動が跳ねないわけが無い。
 幸せで、安心するけど緊張もしている。
 彼を見上げるも、あまりの顔の近さに慌てて俯く。まともに目を合わせる事など出来そうもない。
「っていうか灯り消しなさいよ!」
「ああ、すまん。忘れてた」
 すっと身体が離れた途端に寂しい気持ちが少し湧いた。灯りを消し、戻ってきてまた抱きしめられるとすぐに消えたけど。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「お、おやしゅみなしゃい」
「ああ、おやすみ皆。ありがとう」
 皆が一様に言うと、静寂が空間を包み込んだが、私の高鳴る鼓動は眠らせてくれそうになかった。
 そのまま、どれだけの時間が経ったか分からない。気付けば背後から二つ、静かな寝息が聞こえてきた。二人は
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