高みに上らせるは鳳と月詠
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…」
ほへーっといつもの調子で言う桃香に少し苦笑が漏れそうになったがどうにか噛み殺した。
「おめでとうございます桃香様! これで大陸の平穏に一歩近づきましたよ!」
飛び切りの笑顔で言う朱里。皆の表情も明るく、自分達が前進したことに喜びを感じていた。
対して俺は茶を入れて運んできてくれた詠と月にコクリと頷く。
予測は現実になった。これで俺達は確実に次に攻められる誰かに対して手助けをする暇が無くなったと言える。
雛里にはその予測は話しており、俺の方を少しだけ哀しげな瞳で見上げた。彼女が心配しているのは幽州への侵攻の色が濃くなっている現状で、俺の精神状態を心配してのこと。
白蓮や星、牡丹と仲が良かった俺が潰れてしまわないか心配してくれているのだ。
感謝の意を込めて、そして大丈夫と示す為に微笑み返し、相変わらず雛里には敵わないなと思いながら思考を乱世の先に少し向ける。
袁家への情報収集は秘匿が激しく、未だ確かで強力な情報網が無い俺達では完全には集めきれない。
白蓮と曹操が盟を組んでくれたのならばいいのだが……。
「しかし……やっと内政も安定してきたというのにこの場を離れなければいけないのは少し寂しいモノですね」
哀しそうに言う愛紗の言葉に俺の心も少し寂寥に沈んだ。
「そうだな。行きつけの酒屋や食事処、街の子供たちの笑顔を思うと確かに寂しい」
「でもお兄ちゃん。幽州を出る時と一緒なのだ。新しい所では新しい出会いもあるし、ここでの思い出が無くなるわけじゃ無いのだ」
俺達が沈んでるのを見て鈴々が明るい声で元気づけてくれる。そういえばあの時もこんな風に励まして貰ったっけな。
「そうだよ二人共! 平原の人達との思い出も胸の中に大切に閉まって、新しい思い出も増やしていこうよ! 皆で一緒に、さ」
暖かく、心に染み入る程明るい声で続けた桃香に俺と愛紗は一様に頷き返す。
乱世を進んで行くなら、別れもあり、出会いもまたある。その度にその場所での思い出を積み上げて俺達は進んで行くべきなのだから。
「桃香様、鈴々、もう大丈夫です。皆で進んで行きましょう」
柔らかな笑顔を浮かべた愛紗は自分の心を呑み込んだようだ。
「ありがとう。じゃあ我らが軍師達にこれからの行動を聞いてみようか」
礼を返し、静かに俺達を見ていた二人に問いかけると微笑みを携えて引っ越しの準備の手順を説明し始めた。
俺と愛紗は二人で兵のまとめを、桃香と朱里、雛里は事務書類の荷造りを、鈴々と月、詠は個人の持ち物のまとめに動き出した。
†
兵全てに移動する事を伝え、それぞれが自分達の荷物を纏めに動いてから、俺と愛紗は少しの休息を取っていた。
練兵場の片隅の長椅子に座り、お茶を入れて一息ついていると愛紗がこちらを向いて口を開いた。
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