第9話 ヒステリアモード
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髪を洗いながらそう言ってくるかなめ。
そのシャンプーの匂いに、少し血流が加速する。
俺の買ってきたシャンプーをかなめも使っているはずなんだが……女子が使うとこうも違う匂いに感じるから不思議だ。
「ああ。かなめ――キミは爺ちゃんから聞いた、自分の中の『強くなる』ヒステリアモードの事で悩んでいるんだろう?」
「あはは、もしかしてお兄ちゃん。あたしがまたお兄ちゃんを襲おうと考えてるんじゃないかって来たの? それなら……」
「違うよ」
「え?」
かなめは一旦髪を洗うのを止めて、俺の方へきょとんとした顔で向いてくる。
シャンプーが目に入らないように片目だけ開けてこちらを見るかなめは、兄の俺から見てもかなり可愛かった。
「俺はかなめの事を信じてる。かなめがそんなことするわけないってね。……かなめが悩んでるのは、もっと他の事なんだろう?」
これがヒステリアモードの俺がたどり着いた結論だ。
かなめが前に襲ってきた時は、『ヒステリアモードを扱えるようになって、立派な兵になる』という目標のうえだった。
それ以外にもあったかもしれないが……それでも襲う気があるなら、その情報をもたらした爺ちゃんに即刻聞くはずだ。『どうやったら、そのHSSになれるの?』とでもな。
けれどかなめは爺ちゃんに聞かなかった。
よってかなめが俺を襲う確率はゼロに等しい。……まあいつもの態度から、じゃれ合いレベルで襲われる可能性はあるかもしれないが……
「…………」
「俺に話してごらん、かなめ。俺に出来ることなら、可愛い妹であるかなめの力になりたい。――だから、話してはくれないかい? かなめ」
「…………自分でもよく分からないけど……言葉にするんだったら、存在意義について考えてたのかな……?」
先ほどもう使わないと思っていた『呼蕩』を再びかなめに使い、かなめから悩みを聞き出す。
こうでもしないと、かなめが悩みを言わないと思ったからだ。
そう思った理由ははっきりしないのだが……それでもそう思ってしまった。
「存在意義?」
「……うん。あたし――ジーフォースはアメリカではサードに殺されたことになってる。それはお兄ちゃんも知ってるでしょ?」
「ああ」
かなめはシャワーを出し、髪を流しながらそう言ってくる。
その後、湯船に足を入れて来たので、俺もかなめが入れるだけのスペースを開ける。
「ありがと――サードにあたしが殺されたあの時の映像は、アメリカに流れていたらしくてね。これで晴れてあたしは『遠山かなめ』といて生きていけるようになった……」
スペースを開けたことに対しお礼を言った後、俺とお風呂で向かい合いながら話すかなめの顔はだんだん曇ってきていた。
それでも俺は黙ってかなめの言葉を待つ。
「…
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