第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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は必要だろう。よし。ならば、芸を一通り終えたならば、直ぐにわしの部屋に来い」
蒸気機関車の煙突から出る煙のように、鼻の穴から激しく息を漏らしながらうんうんと頷くと、周りの貴族の顔が一斉に不満の色が浮かぶ。周囲のものが醸し出す不機嫌な気配を感じ取り辺りを見回すと、こほんと一つ咳払いし、かかと笑い出した。
「いやいやこれも隊長としての職務の一つだ。仕方がないことだよあっはっはっはっはっ……」
大笑いするミスコールの姿に、部屋にいる者たちの冷めた視線が集中する。
キュルケは大笑いするミスコールに軽く肩を竦めると、くるりと身体を回すと歩き出した。
「なら、わたくしたちは準備がありますので、これで失礼させていただきますわ」
他の貴族たちに詰め寄られ何やら言い合っているミスコールを背に士郎たちは部屋を出て行くと、成功を祝うように全員が手を打ち合わせた。手を叩き喜びを分かち合ったルイズたちの前に立った士郎は、手を叩き自分に視線を集めさせると腰に手を当て目を鋭く光らせ皆を見回した。
「じゃ、準備を始めるぞ。まずはロングビル。朝説明したとおりに石窯を五つ、いや、十作ってくれ。こっちの人数は少ないから、効率良く配膳出来るように、机と椅子の配置も教えた通りに設置してくれ。俺は下ごしらえを始める。時間がないぞ。急げっ!」
士郎の号令を皮切りに、ルイズたちは中庭に向け走り出す。小さくなっていくルイズたちの背に向けていた視線を外すと、士郎は年代を感じさせる城内の天井を見上げた。
「……必ず助けるからな……もう少し待っていてくれ」
赤く染まった太陽が地平線の彼方へ消えゆこうとする中、アーハンブラ城の中庭にはこの城に駐屯する全ての兵士が集まっていた。広いとはいえ三百人の兵士が集まった中庭は、間もなく始まる芸と食事の期待に満ち溢れ、大声を上げなければ会話が出来ないほどの盛り上がりを見せていた。
初めは選ばれた百人程度が参加するだけの予定だったが、急遽最低限の警備の兵だけ残したほぼ全員の参加となった。これは何もない田舎の廃城で、何の情報も与えられず警護任務にあてられたことに不満が溜まりまくり、今にも爆発しそうな兵士たちの状況を慮っての判断であり。こんな状況で仲間外れの者が出れば、下手をしなくとも暴動は必須だと考えと、隊長であるミスコールの鶴の一声によるものであった。
多くのガリアの貴族がそうであるように、元々無能王と呼ばれるジョゼフに欠片も忠誠心を持っていなかったミスコール男爵にとって、事情も殆んど聞かされずに命じられた警護任務に対しての責任感はゼロに等しかった。更にはエルフと共同での警護任務である。既にゼロと言うよりもマイナスと言ったほうが近い。
そう言った理由から、副官の兵の参加は最大でも半分で
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