第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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。俺も丁度酒が飲みたかったしな。あんたたちの商売を手伝ってやるよ」
兵士の一人が門を開けると、上官に報告するために走り出した。
残った兵士に笑顔を向けたまま、キュルケが背中に組んだ手で背後にいる士郎たちに向け手を振る。百戦錬磨の商人もかくやというキュルケの見事な交渉に、士郎たちは小さく拍手を送った。
上官に報告を終えた兵士は、帰ってくると責任者が直接話を聞くとのことで、アーハンブラ城へと士郎たちを連れ歩き出した。アーハンブラ城に駐屯する三百以上の兵士たちは、十人ほどの貴族がまとめているとのことで、その貴族たちは城のホールに入って直ぐ右隣にある客間のいくつかを士官室として使っており、士郎たちはその中の一つへと案内された。
士郎たちが士官室に入ると、そこには十人ほどのマントを着た人物たち―――貴族たちが各々ソファーや椅子などに座っていた。その中の一人。部屋の奥の中央に、窓を背にオーク材の大きな机の後ろに、革張りの椅子に深く腰を下ろした男の姿があった。その男の名はミスコール男爵と言い、この城に駐屯する兵士たちの隊長であった。ミスコール男爵は四十過ぎのでっぷりと太った男であり、頭は禿げ上がり肌は油と汗で遠目からでもテカって見えていた。
背もたれに寄りかかって興味無さげに部屋に入ってきた士郎たちを見ていたミスコール男爵だったが、士郎に続いて入ってきたキュルケとロングビルの姿が目に入るや否や椅子から立ち上がると、だらしなく目元と頬を垂らしながら近づいてきた。そんなミスコール男爵に対し、キュルケは巧みな話術でまたもや玄人裸足の交渉を行い、見事中庭での慰問会開催の許可を取り付けた。
「ほ〜、料理に自信があると」
「ええ。今まで様々な料理を口にした隊長さまもきっとご満足いただけると思いますわ」
ペロリと赤い舌で唇を舐めるキュルケの姿に、ミスコールの喉がグビリと動く。
「ほ、ほおぉぉ……。そ、それは楽しみだな。だ、だがもっと美味しそうなものもあるなぁ」
ぴくぴくとこめかみを震わせながら、ミスコールの顔がググっとキュルケの身体に近付き、舐めるような目つきでその身体を見回す。今にも飛びかかりそうなミスコールを牽制するかのように、キュルケはにやりとした笑みを浮かべて身体を引いた。
「ふ、ふむ。だがわしも陛下から預かった貴重な兵士たちの安全を守らなければならない身の上。お前たちが何か企んでいないかまだわからないしな……う、うむ、そうだな、どうするか……」
ふんふんと鼻息を荒げながらチラチラとキュルケを見やるミスコールに、キュルケは流し目を送りながら身体をくねらせる様に揺らした。
「でしたら、後ほど直々に取り調べられますか?」
「そ、そうだな。わしが直接取り調べよう。そ、それに兵どもにも娯楽
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