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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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きといっても、町娘が着るような厚い不格好なものではなく。娼婦が着る男を誘うような透けて見えそうなほど薄いネグリジェのような奇妙な服を着ていた。そのネグリジェのような服は、上は手首、下は足首近くまですっぽりと身体を包んではいる。しかし、上は肘から脇下まですっぱりと切れ込みがあり、女が動く度に女の柔らかく膨らんだ双丘が覗け、下は腰横までの深いスリットが入っており、動く度に女のスラリとした足が丸見えになってしまう。更には光の反射具合によっては、その下に着た下着? が透けて見えてしまっていた。
 思わずグビリと兵士の喉が動く。
 そんな兵士の姿に目を細め、口の端を微かに上げた女が優雅に一礼する。

「旅芸人の一座でございます」

 顔を上げた褐色の女―――キュルケはにっこりと笑顔を浮かべる。
 兵士の身体の足先から頭のてっぺんまでキュルケの視線がなぞられると、兵士はまるで、濡れた指先で触れられたかのような、寒気にも似た快感が背筋を走った。

「っ、そ、そんなのはみ、見ればわかる。だが、その旅芸人がここに何の用がある?」
「そんなの決まっておりますわ。わたしたちは旅芸人。皆さまに最高の芸と最高の料理をお届けに参ったのですわ」
「芸と料理?」

 首を傾げる兵士に、キュルケは浮かべた笑みをますます濃くする。

「ええ。芸と料理。そして料理といえば……」

 キュルケは手を荷車に積み込まれた樽に向ける。
 兵士二人の視線が樽に向けられる。内一人が荷車に近づくと、ふんふんと鼻を鳴らす。と、目を見開き憎々しげな視線を荷車を囲む一行―――士郎たちに向ける。

「こりゃあ酒じゃねえか……お前たちか町中の酒を買い占めたって言う奴らは」
「ふふ、そんなに怒らないでくださいな。あたしたちもギリギリなのよ。エルフの土地(サハラ)を巡業してきたんだけど、エルフったら全く相手にしてくれなくて……だからここで一

発逆転を狙って、ね」

 兵士の腕を取り、その身体にしなだれかかりながら耳元で囁くと、雪に熱湯をかけたように兵士の顔はだらしなく溶け崩れる。

「そ、そそそ、そうか、そりゃ仕方ねえな」
「ふふふ、ありがと。で、町の料理やお酒よりもすこ〜し多めにお金を払ってくれたら、サービスたっぷりの踊りを見せてあげますわ。どう、ですか?」

 身体をくねらせ、服の切れ込みから褐色の双丘やら生足やらを見せつけるキュルケ。兵士の首が亀のようにキュルケに向かって伸びる。そんな兵士の様子ににやりと笑みを浮かべると、キュルケはすっと身体を引いた。
 はっと我に返った兵士は、笑みを浮かべ小首を傾げるキュルケに口を開けた間抜けな顔を向けた後、小さく溜め息を吐き首を左右に軽く振ると、肩を竦めてみせた。

「くっくっくっ。いいな。気に入ったぜ姉ちゃん
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