第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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丈夫……」
双月を見上げる三人の口元には、何時しか小さな笑みが浮かんでいた。
翌日、日の光が傾き、その輝きが中天からズレ始める頃、アーハンブラ城の城門を守る二人のガリア兵のうち一人が、傾きだした太陽を仰ぎ見た後、大きな溜め息を吐いた。大きな溜め息をつく同僚に、隣に立つ兵士がその脇腹を肘で小突く。
「しっかりしろ」
「ちっ、いいじゃねえか」
「良くねえよ。あんまり気を抜いてると、『隊長』さまにやられてちまうぜ」
「ハッ。隊長ってあのミスコール男爵のことか? ないない、それはないな。あの色ボケ、こんな辺鄙な所に任務で押し込められてからずっと部屋に閉じこもって酒をかっくらってるからな。今も酒でも飲んでんじゃね?」
「俺が言ってんのはそっちじゃねぇ。…………人間じゃない方だよ」
門に寄りかかりながら耳の穴をほじくっていた兵士は、その言葉を聞いた瞬間、ビンっと背筋を伸ばして立ち尽くした。
「ちょっ、お前何言ってんだ。んなこと言っててあいつが来たらどうすんだよっ。〜〜〜っ始祖ブリミルよ。我が魂を守りたまえ……」
「ふんっ、俺だって言いたくねえよ。しかし、あれがどこで目を光らせてるか分かんねぇからな……だけど……はぁ〜……俺もミスコール男爵みてぇに酒でも飲んで気晴らしがしてえぜ」
「そりゃ残念だな。しばらく酒は飲めそうにねえってよ」
「は? そりゃどういう事だ?」
「昼間街に飯を食いに行ったらな、酒を出せねぇって。どっかの誰かが宿場町の酒を全部買い占めたってよ。そのせいで酒場に行っても酒が飲めねぇ」
「嘘だろっ! こんな辺鄙なとこで唯一の楽しみが酒じゃねぇかっ! はぁ、たくっ何処のどいつだよ、んな最悪な奴は……」
門を守る二人の兵士は、同時に溜め息を吐くと、門に倒れこむように寄りかかった。がくりと力なく垂れ下がった兵士の顔。二人の兵士の目の端に、一台の荷車が近づいて来るのが映った。
「おい」
「わかってる」
顔を上げ、宿場町に続く坂道を登り、段々と大きくなるその姿を視界に収めた二人の兵士は、門から身体を離すと手に持った槍を握り直す。樽をこれでもかと積み込んだ荷車は、ゴロゴロと重そうな音を立てながら近づいてくる。荷車の周りには、五人の奇妙な格好をした男女の姿があった。
荷車を引く五人の男女の中で最も背の高い男が、門の前で立ち止まる。
「何者だ? ここに何のようがあってきた?」
兵士の一人が、荷車を囲む一向に手に持った槍を向ける。と、向けられた槍の穂先をそっと手で押さえながら、一人の褐色の肌を持つ赤毛の女が進み出た。女が近づくにつれ、兵士は自分の顔が熱くなるのを自覚した。
「「……ごっくん」」
兵士は一瞬女が寝巻きを着ているのかと思ってしまった。寝巻
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