第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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け」
「ふ〜ん……ねぇ。どうしてシロウはあんなに無理をするのかしら」
「『正義の味方』になるため?」
「で、しょうね。けど、『正義の味方』かぁ〜……父親との約束とは言え、何でシロウはそんなきついのを目指すのかしら。しかもただの『正義の味方』じゃなくて『全てを救う正義の味方』なんて矛盾したものになりたいって言うし……はぁ……全て……か」
キュルケが真上に登った二つの月を見上げ溜め息を吐くと、それまで黙り込んでいたロングビルがポツリと声を零す。
「『悲しい』からだってシロウは言ってたよ」
「え?」
「ロングビル?」
キュルケとルイズの視線が隣を歩くロングビルに向く。
ロングビルはキュルケと入れ替わるかのように夜空を見上げ双月を見つめ。煌々と輝く二つの月の姿に、眩しげに目を細めたロングビルの視界に、士郎の姿が過ぎる。
「一人でも見捨てたら自分がなりたい正義の味方になれないからって、ね」
「なりたい正義の味方って……『全てを救う正義の味方』のこと?」
「いいや……あれは……多分違うね……シロウはあの時、『悲しい』からだと言った……だから見捨てないと……」
「悲しいから見捨てないって……どう言う意味?」
眉を寄せながら唸り声を上げるルイズに、ロングビルは星空を見上げたまま溜め息を吐くように言葉を紡ぐ。
「さて、ね。シロウは『守りたいものがある』とは言ってたから……その守りたいものが答えだと思うけど……それが何なのかは……」
「守りたいものねぇ……命とか?」
「わからないさそんなこと。わたしにも……ただ、それを守ることがシロウが目指す『正義の味方』だってこと以外は……」
「『全てを救う正義の味方』がシロウの目指す『正義の味方』じゃなかったの?」
「シロウの中じゃ、同じ意味なんじゃないかい?」
キュルケとロングビルの話し合いを横に、黙り込み顔を伏せていたルイズが顔を上げる。
「『何をもって救った』……か」
「ん? 何?」
キュルケが小首を傾げる。
「姫さまから聞いたの。シロウは全てを救うと言うけど、その『救い』というのは、一体何をもって救ったのかって……」
「何をもって救った……か」
ルイズの視線を追うように、キュルケとロングビルも夜空に輝く二つの月を見上げる。
月は高く朧に輝き、しかし、その光は遍く夜を照らし出す。
三人は無言で空に手を伸ばす。
星の海に浮かぶ二つの月を掴むように手を伸ばした三人は、広げた手の平をゆっくりと握り締める。
「ん、でも……姫さまはこうも言ってたわ……」
ポツンとルイズは呟く。
「きっと満足いくと……シロウが目指す『正義の味方』の姿に……だからきっと大丈夫……シロウは……きっと大
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