第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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やったのかキュルケが腰掛ける横で寝息を立て眠りこけていた。
「へぇ、中々上手じゃない」
テーブルに広げられた羊皮紙の一枚を手にとったロングビルが感嘆の声を上げる。羊皮紙には、アーハンブラ城と思われる城の見取り図が描かれていた。城の内部の絵は一枚もないが、外から確認できる城壁や中庭、天守や塔などが描かれている。細部まで事細かに描かれたそれは、ある程度の画力があることを示していた。
「まぁ。これも貴族の嗜みだしね。で、駐屯しているガリア軍のことだけど、あれは一個中隊どころの話じゃないよ。少なくても二個中隊はいたね。兵隊が三百に貴族の将校が十人ちょいってところじゃないかな」
「に、二個中隊って……」
マリコルヌの言葉に、ギーシュが青い顔でガクガクと身体を震わせる。
その横で平然とした顔で士郎がこくりと頷く。
「そうか、だがまあ、これで必要な情報は全て手に入ったな」
「でも三百人は多いわよ。こちらは全員メイジで、シロウもいるから倒すことは不可能じゃないけど、倒している間に援軍が呼ばれるだろうし、タバサを盾にされるかもしれない。別の場所へ連れ去られるかも……。救出のチャンスは一度しかないし……強行突破する?」
士郎の横に立つルイズが、チラリと士郎を見上げる。
「いや、それは危険だ。そう、だな。確か眠りの魔法があったな、それで城砦にいる全員を眠らせるか」
「眠らせるって、流石にそれは無理だよ。数が多すぎる。スリープ・クラウドを使っても全員を一度に眠らせることは不可能だし」
ギーシュが首を振り士郎の言葉を否定する。が、腰掛けたベッドをギシリと軋ませて立ち上がったキュルケが、壁に寄りかかったロングビルに視線を向けて口を開いた。
「眠らせるのは魔法だけじゃないわよ。でしょうロングビル」
「眠り薬かい? 用意は出来るけど、どうやって飲ませるつもり? 井戸に放り投げたとしても直ぐにバレるわよ」
「ん〜ま、大丈夫じゃない? 大量の強力な眠り薬とお酒、そしてシロウの料理があれば、ね」
パチリとウインクしながら士郎に身を寄せたロングビルが笑う。
「眠り薬? 酒に混ぜるのか? しかし、兵士にどうやって飲ませるんだい?」
「だから大丈夫だって言ってるでしょ。あんたはいいから酒を買ってきなさい。ほら財布。全部使ってもいいからこの辺りの酒を買い占めなさい。あとマリコルヌ。引き続き城砦の監視をお願いするわ」
「へ? いやぼくまだ食事とっていな―――」
椅子に座ったまま顔を振り向かせ見上げてくるマリコルヌに、キュルケはすっと目を細め唇を歪ませる。
「あら? 豚が人間に歯向かうの?」
「ごちそうさまでし
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