第十章 イーヴァルディの勇者
第七話 矛盾が消えるとき
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をすれば際限なくぐだぐたと話し続ける―――とは言え、無視をするのは客商売として駄目だ。そのため、主人は内心溜め息を吐き続けながらも、商人が望む答えを返す。
「知らないね」
「そうかそうか。なら教えて差し上げようかな。ここらのもんは何やら宝物でも発掘しに来たんじゃないかと言ってるがね。実を言うとなぁ〜〜」
「はいはい」
顔を商人に向けても視線は手元のグラスに落としたままで、居酒屋の主人は商人の言葉にうんうんと頷く。明らかに話を聞いていない。
これは商人の話が興味がないという以前に、若い頃は旅を続け苦労の末に居酒屋を開いた主人は、余計な好奇心は身を滅ぼすということを身をもって知っていたからだ。
「ん〜どうしようなぁ〜そうだなぁ〜一杯奢ってくれるなら、話してやってもいいけどなぁ〜」
「結構だ」
「ちっ」
商人は先程までの酒に酔った姿から素面に一変させると、舌打ちを一つ打ち顔を背ける。それを横目で見た主人は、これだから油断が出来ないと溜め息を飲み下す。話は終わりだと主人が拭き終えたグラスを置くと、新たなグラスを手に取る。商人は手に持ったグラスに残った酒の少なさに大きく息を吐く。そんな時、商人の横に座った砂塵よけのフードがついたローブに身を包んだ女が座った。女は、商人が吐いたため息に被せるように、カウンターに肘を着けると隣りに座る商人に声を掛けた。
「あら、わたしは興味があるわ。ご主人。この方にエールを一杯差し上げて」
突然の女の声に主人と商人二人の視線が女に集まる。フードを被った女の顔は、フードの隙間から覗く褐色の肌と赤い唇しかわからなかったが、整った唇とほっそりとした顎のラインと、漂う香水と女の香りが混じった甘やかな香り、そして耳元を心地よくくすぐる蜜のような声に、客商売の二人の目が、女が相当の美人であると判断した。
思わず生唾を飲み込みながらも、主人は空になりかけた商人のグラスになみなみとエールをつぎ足す。その際、必要以上にカウンターに身を乗り出し、女の身体に視線を這わす。女の身体はローブに包まれていてもなお、その大きな胸が自己主張していた。その事に気付いた主人と商人の喉が再度動く。
「じゃあ、聞かせていただけます? 先程のお話を、ね」
誘うように長い足を組みながら、女はフードから覗く唇で弧を描いた。
「ざっとこんなものね」
商人から話を聞き出したキュルケが、士郎たち一同が座るテーブルの前に戻ると両手を広げてみせる。芸を披露した大道芸人のように両手を広げて喝采を望むキュルケに、士郎たちは賞賛の声と拍手をもって迎え入れた。士郎たちはキュルケと同じように、砂漠用のローブを羽織っている。
オルレアンの屋敷でタバサたちの居場所が判明した後、士郎たちは一週間を掛けて
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