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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第46話 「思惑と読みあい」
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大きくせざるを得ん。
 権限が大きくなるという事は、巨大な自治領を背景に、帝国の国政に口出しできるようになるという事だ。帝国の議会にも影響力を持つようになる。
 地球教と同じようなやり方だ。内側から食い物にしようとする。

「なるほど……生贄かよ」
「……生贄か」
「ああ、六個艦隊を生贄にして、帝国に併合させて懐に飛び込もうとしてやがる」
「お、おぞましい考えだ」

 ラインハルトの顔に嫌悪感が浮かんだ。
 そうだよな。お前ならそう感じるだろう。その点では俺も同じだ。

「やはり予定通り、軍は動かす。そしてティアマトで出てこない場合、アスターテまで押し出すぞ」

 それでも出てこない気ならドーリア星域まで向かう。そうなればエル・ファシルだけでなく、シャンプールまで支配星域にできる。
 補給先は伸びるが、八個艦隊だ。ヤンが第十三艦隊を持っていない以上、一個艦隊でそれを阻止できる奴がいるとは思えん。つまり向こうも六個艦隊で迎撃する羽目に陥る。
 ごちゃごちゃ考えずに、ぶっ飛ばした方がいいな。
 後はじわじわ追い詰めるだけだ。

「ただし、ヨブ・トリューニヒトがもう一度、フェザーンに逃げてきても、今度は暗殺してやる」

 負けたら嬉々としてフェザーンにやってくるだろう。
 表面上は更迭、しかし内心はフェザーンで帝国側とパイプを作り、そこで一定の勢力を作るために。まったく今の段階で、負けた後の事を考えるどころか、負けさせることすらしようとは……。

「化物みたいに性質が悪いやつか……その通りだな」

 ラインハルトも嫌悪感と警戒心を綯い交ぜにした表情を見せる。

「予定通り叩いて、その後は磨り潰していく。ただ予定とは違って少し早いがな」
「改革だ。改革。時間がない。だから、馬車馬のようにはたらけー!」

 うわっ、ラインハルトの矛先がこっちにも向けられてしまった。
 書類でぽかぽか叩いてくる。
 なんてこったい。

 ■宰相府 ジークフリード・キルヒアイス■

 宰相閣下とラインハルト様の会話を聞いていて、身の毛がよだつような嫌悪感が湧いてきました。
 おぞましいと思ってしまいます。
 宰相閣下が分かっていても、やろうとはしなかった策。

『戦術は道徳から解放されたものであり卑怯も何もない』
『やれば勝つと分かっていても、やってはいけない策もある』

 とは以前、宰相閣下から教わった言葉ですが、この二つは軍人と統治者の差のような気がします。確かに戦いには勝てるでしょうが、その後の統治を考えると、それでもやってはいけない策がある。
 勝てば良かろうだけではいけない。ラインハルト様もそれを感じとられたはず。
 ぽかぽか宰相閣下を、書類で叩いているラインハルト様を見ながら、そんな事
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