Development
第十八話 迷路
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天才ゆえに、他者には理解できない。それを理解してもらおうとするのであれば、それ相応の対応が必要になるのだが、束はごく一部の者を除き全く意に介さない。それは理解してもらうつもりも必要もないと考えているからで、故に彼女が他者に理解されることはない。理解できるのはそのごく一部のものか……もしくは彼女と同じ天才か。
「……彼女の行動原理は単純で……純粋だよ。家族を守ること、そしてISの発展。彼女の言う家族は別に血の繋がりだけじゃない。逆に言えば血の繋がりがあっても、彼女が認めなければ他の有象無象と変わらないんだろうけどね」
『彼女のその信念が私の信念の領域を侵すなら……私は例え敵にまわってでもそれを止めるわ』
「楯無さん……」
それは揺るがない決意。譲れない想い。
『紫苑君、あなたはどうなの?』
「僕?」
紫苑にはそれがあるのか?
「僕は……」
否。
『私はあなたと敵対はしたくないし信用しているけど、状況がそれを許さない時がある。あなたはそんな時どうするの?』
ここまで状況に流されてきた彼に束や楯無のような確固たる信念などない。
「……」
紫苑は学園で生きる意味を見つけた。しかしそれすら自身を偽り、与えられた虚像の中で見つけたもの。
『ごめんなさい、やめましょう。今する話じゃなかったわね』
一本芯が通った信念がなければ簡単に揺らぐ、ブレる。万が一、束と楯無が対立したときに紫苑はどうするのか。今後、起こり得るさまざまな可能性の一端。受け入れがたい、考えたくないそれに気付かされる。気付いた以上、目を背けることはできない。
『でもこれだけは覚えておいて。例えあなたが敵になることがあっても、私はあなたを友人だと思い続けるし、信じているわ』
自分の行動に自信を持ち、責任をとることができる者の言葉の重み。未だ持たざる紫苑にとってそれはあまりに重く……故に響く。
『それじゃ、おやすみなさい。早く会えるのを楽しみにしてるわ』
楯無は紫苑の反応を待つこともなく通信を切った。その後も紫苑はさきほどの言葉を何度も反芻して自分の中で答えを出そうとする。
束を守る? なら何で傍にいない。
束の指示に従う? それでは西園寺にいるのと変わらない。
学園のみんなを守る? これが近い気がするけど、何かが違う。
それでも一つの答えにたどり着けない紫苑は、容易に辿りつけられるようなものに意味がないことを理解しつつも、それでも求めずにはいられなかった。
楯無も、本来はこんなことを言うつもりはなかった。しかしこれから波乱が起こり得るであろう学園で、今のままの紫苑ならいつか壊れてしまうかもしれない、壊されてしまうかもしれない。そう感じた彼女はこぼれ
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