Development
第十八話 迷路
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事件が起きる。言うまでもなく、男性操縦者である織斑一夏の出現だ。当然ながら学園でもやがて入学することになるであろう彼の話題で持ちきりとなり、久しぶりに明るい雰囲気に包まれた。ただ、一人を除いて。
(ふふ、世界で最初は紫苑君なのにね……)
楯無は、一夏に対して特に興味を抱けなかった。なぜなら学園生徒の中で唯一、楯無にとっては彼が世界初でも唯一でもないことを知っている。織斑千冬の弟という一点は気になる部分ではあったものの、それだけだ。
楯無自身、紫苑の無事を信じきっているかと言えばそんなことはない。元々彼女は現実主義者でもあり更識の諜報能力には絶対の自信を持っている。束の動向がいまだに掴めないものの、それでも紫苑に関しての情報がここまで一切入ってこない以上、やはり難しい状況だと感じていた。
それでも死という確実な情報がないこともまた事実であり、その可能性をまだ捨てないでいた。
そんな折、織斑千冬によって齎された情報はまさに青天の霹靂、しかしそれは彼女にとって待ち望んでいたものだった……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『紫苑君、無事だったのね!?』
千冬から無情の留年宣告を受けた紫苑は、そのまますぐに楯無へと連絡をとる。そして通信が繋がるなり飛び込んできたのは耳を劈くほどの楯無の声だった。
「わ、び、びっくりした。うん、なんとかね」
『びっくりしたのはこっちよ! 半年もどこほっつき歩いていたの。ずっと探しても見つからないし……生きてるか死んでるかもわからなくて……本当に……』
その言葉と様子から楯無がどれだけ紫苑のことを心配していたのか、姿は見えなくても十分に伝わった。
「ごめん……心配かけちゃった」
『別に……! ただあなたがいなかったお蔭でクラス代表を兼任することになるし、学園はお通夜みたいだし、大会は手ごたえなくてつまらないし……愚痴が言える相手もいなくなっちゃうし……』
「うん……ごめん」
素直に心配していたと言えない楯無を、今回ばかりは紫苑も茶化したりはできなかった。どんな時でも冷静な一方、紫苑の何気ない言動に動揺することもあった彼女だが、ここまで感情を露わにしているのは紫苑にとって初めてだった。紫苑は言葉を挟むことができず、楯無が落ち着くまでただ話を聞きながら謝る。
『ごめんなさい、少し取り乱しちゃった。でもおかげで落ち着いたわ』
「ううん、僕の方こそ連絡もできなくて本当にごめん」
『謝らないでよ……、あなたは被害者なんでしょ。それより、何があったか教えてちょうだい』
しばらくして落ち着きを取り戻した楯無に、紫苑は事件当時に起きたこと、そこで意識を失い昨日まで眠っていたこと、今まで保護してくれていたのが束であることを分かる限り伝えた。ただ
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