ルリム・シャイコースとの戦い V
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「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・グッ・・・!」
アーグラ廊から遠く離れた、とある民家の裏。そこに、男がもたれ掛かっていた。
草薙護堂である。
彼は、全身から滝のように汗を流し、息を荒くしていた。脇腹と背中からは夥しい量の流血をしており、顔色が悪い。
―――が、そんなことは些細な問題である。こうしているうちにも、彼の【ステータス改竄】の『治癒』によって、傷口が塞がり続けているのだから。
・・・問題は、別。
彼の両腕である。
「クソ・・・治らない・・・!」
あの一斉射撃の瞬間、彼は『神速』を装填していた。多少の被害は無視し、当たれば即死する光の柱だけを避ける為に、全力で走った。【黒の戦士】モードを使用出来れば、また違った選択肢があったのだが、聖句を唱える時間もなかったのだ。
・・・が、いくら神速でも、あの弾幕を全て避けるのは不可能である。そもそも、神速とはその性質上、細かな制御が聞きにくいという弱点がある。雨あられと降り注ぐ白い光と、反対側から襲いかかる氷の刃群。それらは、確実に護堂を蝕んでいた。
最初は、脇腹に刺さった氷の刃。恐ろしい勢いで飛来したその刃は、カンピオーネの頑丈な体をいとも容易く食い破り、凄まじい衝撃を彼に与えた。
痛みを覚悟していても、どうしても足は鈍る。その瞬間を、光に狙われたのだ。
彼の左腕も、右腕と同じように氷へと変換されてしまった。
同時に、背中にも刃が突き刺さったのを切欠に、護堂は撤退を選ぶ。女の子も近くにはいないし、今のこの状況では自分が圧倒的に不利だ。『治癒』で治せるとはいえ、その時間を相手が与えてくれる訳がない。それに、上空にそびえる巨大な氷山。あの攻略法を思いつかない限り、彼は常に挟み撃ちを受けるのだ。
刹那にそこまで考えた護堂は、痛む体を無視してアーグラ廊から逃げ出す。神速を維持したままでなら、あの敵からも逃亡出来るはずだと考え。
―――結果として、護堂の行動は最適解であった。
何故なら、”イイーキルス”から放たれる白い光によって氷へと変化させられた物質は、『治癒』で修復出来る代物ではないからである。
神速の使いすぎで痛む心臓と硬直する体。それを癒すために使った『治癒』は、体の不調や怪我は直してくれても、この両腕を治してはくれなかった。
「ぐっ・・・なんなら効く?・・・『解呪』とかどうだ・・・?」
心臓の痛みが大分マシになったので、腕の治療を優先しようとした護堂。正直、両腕が使えない状況でルリム・シャイコースに襲われれば一巻の終わりである。逃走の切り札である神速はもう使えないし、腕が動かないために、無線機を起動して鈴蘭たちに助けを求める事すら出来ないのだから。
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