Introduction
第十六話 落日
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という結論に至る。
目的を果たして帰ろうとしたところ、突如として研究所内に爆発音が鳴り響く。それは一度では終わらず、二度、三度と続く。同時に響く、けたたましい警報。それが、さきほどの爆発は実験などではなく明らかな異常なのだということを伝える。
いったい、何があったというのか。この研究所は一般のラボとは離れていて、主に月読に関してのみ使われている。月読が他の武装を使えないこともあり、余計な武装や先ほどのような爆発が起こるようなものは置かれていないし、そういう事故が起こるはずもない。ということは……。
「襲撃!?」
真っ先に思い浮かんだのは、亡国機業。なぜなら、以前学園を襲撃した亡国機業が狙ったのは月読だった。なら、警備が厳重で戦力もある学園より外に出たところを狙うのが効率的だ。でも月読は破損していてこのまま奪ってもまともに運用はできない。開発元でも修復に四苦八苦している状態で奪って、果たして役に立つのだろうか。それとも、そういう情報を掴まないままただ奪うことを考えたのか、または別の目的か。
刹那のうちに様々な思考が頭を過ぎったけど、今の状況でそれを考えても仕方ない。まずは残っている人の避難誘導と消火を行おうと僕は月読を展開する。
と、同時に体中を原因不明の痛みが駆け巡る。
「が……はっ」
体がバラバラになるような感覚。何かがポロポロと剥がれ落ちていく。それは黒い破片……月読の装甲だった。周りには誰もおらず攻撃を受けたわけではない、かといって爆発に巻き込まれたわけではない。ただ、崩れていく。それがまるで自分の体であるかのように痛覚に作用する。
「ぐ……げほっ」
突如、体の中から何かがこみ上げてきて思わず吐き出してしまう。辺りを覆い始めた煙と、やや霞む視界に移ったのは、眼下に零れ落ちた赤い液体。
「こほっ……血? こんな……ときに……」
フラフラする頭で、それが僕の口から吐き出されたものだと理解し、それが意味することを悟る。そしてそれ以上考えるのも億劫になり、足から力が抜けてしまう。
「た……ばね……さん」
そんな中、真っ先に束さんの顔が脳内に浮かんだ。
彼女がいなければ僕は壊れていた。束さんも、僕がいてくれたから救われた、と一度だけ珍しく真面目な顔で話していたのを思い出す。お互い様のようだ、なら僕がいなくなったら彼女はどうなるのだろう。僕は束さんがいなくなるなんて考えられないし、そうなったらまた壊れてしまうかもしれない……。もし彼女も同じなら、僕はここで倒れる訳にはいかない、そう思うけれど力が入らない。
月読も崩壊が止まらず、このまま爆発に巻き込まれれば絶対防御も発動しないかもしれない。
「楯無……さん」
続いて、楯無さんの顔が頭を過る
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